2008/02/25
四話
小林君の説得に
成功した信玄は、
浮かれて踊りながら
道を歩いていた。
「やったね、これで
うさ晴らしの
大冒険が出来るぞ」
(戦国時代で大暴れできるわね)
すかさず、最近何も無くて
暇だった観自在菩薩のケイトが
春山さんの脳内に構築された
護睡庵のコタツで
ミカンをムシャムシャと
食べながら言った。
「しかし科学的にそんなコトが
可能なのでしょうかね?」
(渾沌氏にでも訊いたら?
あなた、御相伴役なのでしょう)
「えー、いやだ。
ジャガンナート系の
観想がケイトと不動尊の
最強コンビでも
何とか普通に会話が
出来る程度じゃないか。
出切れば直接ご本尊に
関わりたくないね…。
ご本尊は、仙人的に
タダの道だし
ワガママだから
訊いたって無理だよ」
(まあ、それもそうね)
はたから見ると
完全に莫迦なのだが
自分で自分が莫迦だと
了解してから自分の思考回路を
好みの設定に構築し直して
遊んでいるので。
ハッキリ言って、タダの空想である。
独りで喋っているうちに
スナック「張さん登仙坊」の
看板が見えた。
張角が開店した
お洒落な飲み屋で
看板娘のフランソワという
カワイイゾンビマスターが
人気のお店である。
今日は定休日なので
裏口から入ると
仙人の張角が暖簾の下から
顔をのぞかせる。
「む、魔法仙人のお出ましじゃな。
今日は、かわいいフランソワちゃん
チョット出かけておるよ」
春山は、あからさまに
ショボクレタ顔で張角に言った。
「ああ、張さんも
探偵局の皆で行く
ピクニックに来る?」
張角は細い眼を輝かせると
大きな声で返事をする。
「もちろんじゃ!
戦国の美女に
会いに行くのじゃろう?」
「何でわかるの?」
老人は、
さらに鋭く細い
猫のような眼を
琥珀のように輝かせて
答えた。
「わしも仙人に
なっておるからな」
春山信玄は侮り難し張角…と
心の中で思い、
感嘆の表情で
老人を見つめていた。
「さすが、仙人…。
張さんも参加決定か、
あとはフランソワーズだけだね。
近所のスーパー辺りに
買い物行ったのでしょ?」
そうじゃと張角が言うと
信玄は走って出て行ってしまった。
張角は春山を
完全に見送った後
独りで呟いた。
「ククク…、引っかかった。
小林君から
電話があっただけ
だというのにのう」
by 護睡庵(春山信玄) at 19:42 |
春山対信長 |
comment (0)
|
trackback (0)
|
page top ↑
2008/02/26
5話
古いアパートが
取り壊されている
音を聴きながら、
春山信玄が
フラフラ歩いていると。
女の人の叫ぶ声が
聞こえたので、
物騒で関わりたく
無いものだなぁと
思いながら、加速して
通り過ぎようとしたら
何か叫んでいる女性は
フランソワだった。
数人の白い服の男に
絡まれているようだ。
「ねぇ、かわいい
フランソワーズちゃん。
今度みんなで遠足に
行くのですが。
男だけで行きたくないし
花がないと僕はイヤなので
一緒に来ませんか?」
フランソワは
春山に笑顔で答える。
「助けようとかシナイノカ、
ノウズイガ既に
クサッテンジャナイノですカ」
「だって、そんな奴ら
ゾンビパウダーかければ
下僕じゃないか」
「今、品切れだから
スーパーの魚屋を誘惑して
材料のフグの肝臓仕入れようと
シテンジャネーのカデス」
「あ、にゃるほど。
何か日本語上達したよね
偉いなぁ勉強熱心だ」
「最初から日本語くらい
完全に話せます。
便利だからカタコトなのよ
愚か者、早く助けるが良い
下僕ゾンビ春山!」
「何それ酷い…
うう、イメージが崩れた。
詐欺だ、エトランゼな感じが
良かったのに…」
比較的、緊張感の無い会話に
痺れを切らした
白い服の中身たちが
意味も無く、怒って叫びだす。
「貴様が春山かぁ、
我々の指導者
マシュー様の仇…
覚悟しろ春山信玄!」
八人の魔術師と思われる
変質者たちは、
変な呪文を唱え始めた。
「インエクセルシス サタネ…」
春山信玄はため息をつき、
眉間にシワをよせてから、
こう忠告した。
「あのねぇ、大した魔力も
防御結界も無いのに
そんなもの呼び出したら
君たちアレですよ。
引き摺りこまれて
ゴートゥーヘルになりますよ
止めなさいよ」
(莫迦に言っても無駄よ)
八人の男が呪文を唱えると
男達の背後にサタナエルが
現れて言った。
「ワレニアダナスハナニモノゾ」
周りの景色が暗い紫の幕に
包まれている様な感覚がした。
(あなた、早く何か護神術使いなさいよ
フランソワちゃんが瘴気に当てられて
もう、目つきがアブナイわよ)
観自在菩薩が言うので
最強魔術で防御することにした。
「まあ、科学的に言ったらさ。
そいつらの
イメージ上にいるアンタだって、
全体的に見たら僕の爪くらいでしか
無いってコトなんだけどね。
さて、伸びた爪でも切ってやるかね。
覚悟はイイかマイ、サン」
春山信玄は定年後
究極の魔法使いになって
もてまくるために人間を辞めて
魔法仙人になったという
少し変わった人なのである。
使える魔法のレパートリーは
意外と多いという話を
いつも、自分で言っているが
全ては空想だとも言うので
客観的に見て
実際使えているのか
どうかは怪しい。
「魔法理論解体
現!観自在菩薩」
(さっきから居るわよ)
「あ、そうか」
「九層盤観想護神方陣…
空想宇宙空間規定
現れよ、マイフレンド!
ジャイ、ジャイ、ジャガンナート」
(何か面白い冗談無い?)
「それどころじゃないよ」
素早く印を結ぶと
ジャガンナートのように
ニッコリ微笑んで
信玄は言った。
「邪道、覚悟してね。
現不動尊…
ノーマクサーラバ
タタギャーテビャク
サーラバァボッケービャク
サーラバ、タタラタ
センダァー
マカロシャーダーケン
ギャキギャキ
サーラバビギンナン
ウンタラタカーンマーン…」
生ぬるい紫の炎の幕が
灼熱の白い焔に焼かれて
吹き飛ぶと魔術師たちの
魔力は掻き消えた。
「なんだ、なにが起こった?」
白い服の中身が
何か言っている。
「何か起こるのは
これからだゴミムシ。
不動明王女神転身!
現れ同化せよ
私の愛するカーリー」
イメージ上の空間に
女神カーリーが現れると
春山は残酷な笑顔で
呆然とする男達に
足払いをかけた。
「ぐぅ、魔法教理には
こんな魔術は無かった…」
先ほどまでは、意味も無く
正しそうにしていた下衆が
地面に顔を埋めて
泣き言を吐いていた。
「ふふふ、あっはっは。
全ての最初にあった
純然たる古代魔術ですよ。
魔法といったら此れしか
無いでしょう。
何か勘違いでも
なさっているのでは
ありませんか人間。
権力と魔法は別モノなのに
勝手に下手に混ぜたから
分らなくなってしまったのかしら」
グシャ…
その後、カーリーの安全靴で
八人の男は
完全に踏み潰された。
by 護睡庵(春山信玄) at 18:21 |
春山対信長 |
comment (0)
|
trackback (0)
|
page top ↑
2008/03/30
大手宝石会社
サンジェルマン小林
本社ビルの地下室で
春山信玄が
バーベキューセットを
時空航行装置に
詰め込んでいると
禅僧の安室君が
空気の層から
徐々に姿を現した。
「うわー、
春山さん助けて
お化けロボだ!
またビルを壊す気かぁ
やめろー」
小林君は
ある事件に巻き込まれた時
安室君に本社ビルを
木っ端微塵にされてしまった。
ビルの再建費用の
返済などで
暫らく赤字が続き
ストレスで血尿が出て
定期的な通院を
余儀なくされたという
経験がトラウマになり
安室君のことが少し
苦手になっていたのである。
安室君は少し変わっているが
根は優しい善い子なのに
こういう事って
難儀なことだなと
春山信玄は想った。
「それで、安室君。
牢獄から消えたって
新聞に書いてあったけど
あの後どうしたの?」
安室君は涼しげに
笑ってコトの顛末を
話してくれた。
「いや、今みたいに
空気になってですね。
一時的に、老師に
相談しに行ったのですが。
人様に迷惑かけるとは
言語道断じゃよと言われまして。
スパッと破門されてしまって…
もう仕方が無いから
空気の様に
生きて行こうと想って、
暫らく空気やってました」
それは、
達人の領域だなぁ
流石、渾沌氏制作の
空型改造人間だよね。
何だか後輩に
追い抜かれて
しまったなと思い
非常に感心して頷くと
春山信玄は
笑顔で問いました。
「それで、何の用?」
「いや、戦国時代に
一緒に行きたいなと
想ったので。
捕まったのだって
あの時、
先輩に呼ばれたのが
原因なのですから。
そうでなければ
今頃、座禅ツアーに
来た人に
お茶を振舞ってますよ。
何が悲しくて
空気なんて
やってなければ
ならないのか
解りませんよ…」
「そうじゃないだろ。
破門されたのだから
そうじゃないんだよ君は、
指示と違うことを
やったのは自分なのですから
そんなこと言うような
今の、あなたは
自分かわいさの
念の入りすぎですな
座禅修行が足らないよ」
(でも可哀想じゃない、
便利だから連れて行きましょうよ)
安室君が涙目で
私も連れて行ってくださいという
メッセージを無言で伝えてきた。
そのむさい視線が五月蝿いし、
観自在菩薩のケイトちゃんが
可愛い顔して頼み込むので
春山は渋々
安室君を連れて行くことにした。
「春山さぁん…
その、お化けロボも
来るのですか
こわいですよぉ」
サンジェルマンが
ただ、ひたすら
怯えている。
少し向こうを見ると
スーパーで買ってきた
ペットボトルと
ガスボンベを
何故か無理やり
春山のリュックサックに
詰め込んでいた
フランソワと
目が合ってしまった。
「おい、ダメだろがコラ!
なんで、僕のに
重いもの入れるの
お菓子が全部
つぶれちゃうだろうが…」
本気で怒った
春山に
そっと近づくと
フランソワは
栗色の髪の毛を
その細い指でかきあげて
春山を見つめる。
信玄は、おお何か
いい雰囲気じゃないかと
妙な期待をしていると
耳元にフランソワが
一言、囁いた。
「心配要らないでス。
お菓子はモウ、たべマシタ」
その言葉を聞いて
開いた口が塞がらなくなった。
しばらくして、
諦めがついた
春山信玄が
後ろを振り向くと
気配も
何の前触れも無く
いつの間にか、
姉が佇んでいた。
目が笑ってない
機嫌が、非常に
悪い時の顔だった。
「私に内緒で
面白そうな所へ
行くんだね。
随分偉くなったね、
信玄ちゃん。
ゲームで負けたくせに」
そう言いながら
無言で
春山の髪の毛を
四本ほど、グイと掴み
思いきり引き千切った
そこにいた、
フランソワを含む
全員の顔が
あまりの恐怖に
凍りついてしまった。
by 護睡庵(春山信玄) at 15:31 |
春山対信長 |
comment (0)
|
trackback (0)
|
page top ↑