魔法仙人の弟子

その昔、モテナイとか
色々な理由で

世の中が
気に入らなかった護睡庵は
魔術で宇宙を消し去ろうと
秘術の限りを尽くしましたが
見事大失敗して
錬金術師の何とか君と
似た様な状態になりました。
反省した護睡庵は、
こう呟きました。


「きっと、魔法に対する
 理解が足りないからだ…」


十分な思案の末、
裏の世界で有名な
大観音山脈に
向かうことになりました。


山道を歩いていると
ヒョッコリ現れるという
魔法仙人
「ヘルガイスト・デルタ・ローク」に
魔法のことを教えてもらおうと
思ったからです…

山の中腹にある
カルデラの湖で
お腹が減った護睡庵は、
ソウ魚でも食べようと
思いましたが
残念ながら
魚は一匹もいません。


向こう岸に子供がいたので、
ご飯を貰おうと思い
話しかけました。


角が生えた子供だったので、
こう褒めてあげました。


「その角、カッコいいですね。 
 美味しいものを
 食べさせて貰えませんか」


子供はそれを聞くと
笑顔で言いました。


「これの良さが判るのか、
 お前、見所あるじゃねぇか…
 何処から来やがった」


驚いた護睡庵は
心を落ち着けて、
答えました。
「ジャパーン!」






子供は笑って言いました。
 「黙れ無明が…!」


反省した護睡庵は、
本題に入ろうと考えて
話を仕切り直します。


「貴方が
 ヘルガイスト・
 デルタ・ローク君ですか
 全粒子を崩壊させる
 呪法を教えて
 頂きたいのですが」


デルちゃんは
アキレタ顔で言いました。


「お前、古文書の呪法とか
 鵜呑みにするタイプだろ。
 愚か者が、
 いちいち魔法の本質から
 説明してやらなきゃ
 ならねぇのか…、
 めんどくさい。
 何か授業料をよこせ」


護睡庵がポケットを漁ると、
金柑のど飴が
入っていたので
デルちゃんの手のひらに
そっと、おいてあげました。


「仙人様は
 ご存知ないでしょうが、
 この美しい石は
 現代における人界の
 秘宝中の秘宝…
 全人類の英知の結晶です。
 全ての生命と
 喜びの心を凝縮した、
 『蜜の宝珠』というモノで
 御座います…
 人の身で、
 これ以上のモノを
 用意するコトは
 難しい。
 宜しければ、
 これをお納め下さい…」


デルちゃんは興味深々です。
眼が輝いています…
「ドウ使うんだ、これ…」


護睡庵は親切に
説明してあげます。

「舌の上に置いて
 コロコロすると、
 至福の蜜が
 体中に流れ往くのです」


デルちゃんは、
ニヤニヤしながら
護睡庵の肩に手を置いて
言いました。


「良いものをアリガトウ、
 明日から教えて進ぜよう!」

昨日デルタローク城に
泊めて貰った護睡庵は


しばらくの間、
ご厄介になる事にしました。


誰もいないので
茶の間のコタツの中に
モグッテ遊んでいると


城の主が起きて来ました。


今日のデルちゃんは
飴を貰ったので、
機嫌が良くて
何でも喋りそうです。


護睡庵は
笑顔を視ているのも
厭きたので
こう訊ねました。


「待ちくたびれたので、
 早く教えてくださいな☆」


デルちゃんは仏頂面になって、
怒りを込めて言いました。


「蚯蚓の王が…、
 てめえは
 世の中の
 何が
 気に
 入らないんだ?」

護睡庵は0.1秒考えて
答えました。


「個別に観ると
 最高に素晴らしいのに、
 全体を観ると
 手に負えないので
 腹が立つし
 自分も含めて
 気にいらない。
 どうにかしようと
 頑張ってみたのですが
 上手くいかなかったので、
 今反省している所です☆」


デルちゃんは
ニヒルなアヒルのように
笑って言いました。


「その考え方が、
 魔術師としての
 最初の一歩なんだけどねぇ…」


護睡庵は、
すかさず質問しました。


「次の一歩は何ですか、
 最終的にはどうなるのどナルド?」

異様につぶらで
大きい瞳が妖しく光り…
デルちゃんは、
静かに呟きました。


「黙れ、北京ダック…。
 ひとつの方向でダメなら、
 別の方向に同時に進め。
 歩く時は無理だが、
 思念を全ての方向へ
 同時に向わせるコトは
 不可能では無いのだ。
 まずは心に方向を与えろ。
 例えば、瞳を閉じた時。
 斜めも含む全ての場所へ
 遥か遠くの山を
 見るくらいの距離に
 数字をイメージしてみなさい
 イメージだから何処まで
 小さくしても見えるはずだ…
 後方は難しいが、
 やって出来ない事も無い。
 馴れないうちは
 正面と同じ位置か
 中心に数字が浮かぶはずだ
 浮かんだらディメンダーが
 後ろ側にいて
 吸い取られている感じにすると
 数字の奥行きが
 拡がるのだ…」


「全ての方向に川を作り、
 その流れを
 活用するのが魔法だ。
 堰き止めるだけでも
 ヤバイのに、
 魔力の源を消そうとして
 無事で
 済むわけ無いでしょが、
 馬鹿め…」


護睡庵は、
しょぼくれて言いました。


「テレッテー、
 テレ、テレッテ。
 馬鹿だもん…」


デルちゃんは
正露丸を噛み潰したような顔で
問いました。


「てめえ、
 本は読むのか?
 おもしれぇと思ったものは
 何だ、言え…」


護睡庵は随分と
口が悪い子だなと
思いながら
答えました。


「ポール・アンダースンと
 アラビアンナイト、
 立川談志遺言大全集とか」


それを聞いたデルちゃんは
急に優しくなりました。


「それじゃ、あれか。
 最初の何分かを待てる
 粋なタイプの人間ってことか
 オレが昔、寄席で行った時
 そうだったからね。
 気が合いそうじゃねぇか…」


デルちゃんは笑顔で
何処からか
『ゲーテ詩集』を取り出すと
護睡庵の手のひらに
置いてくれました。


「今のお前に必要なのは、
 この中にある
 『宝堀り』という詩だ。
 魔法に関しての
 最初の心得が
 載っているから」


護睡庵が読んでみようと
表紙に右手の親指を
のばした瞬間…


デルちゃんが眼にも
とまらぬ速さで
本を手のひらから
引ったくりました。


「偉大なゲーテは言いました。
 『金あるものは使うべし』
 値段は420円☆」


護睡庵は泣きそうになって
心の中で叫びました。


 「お金無い」
by 護睡庵(春山信玄)  at 19:11 |  連載 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

大魔導神話

第一詩篇


時の流れは移りゆく
世界と神々の倒れし時
古き神々の秘術は眠る。
慈悲深き
イグドラシルの揺り籠で…


主神オーディンと
麗しき神ロキの魔力を
継ぐもの…


時空の覇者
「ヘルガイスト・デルタ・ローク」


神々の世界が滅び
微細に解体されゆく
崩壊と再生の巨人、
盤古は
最後の瞬間、
混沌と成りし意識の中で
心の中心に世界樹を抱く…


美しいトネリコは枯れ、
封印は月光と共に融けた…


全ては輝く朝日に照らされ、
瑪瑙色の空気は
渇いた瞳に魂の息吹を与え
全ての存在に光が満ち溢れ、
紫の世界が白く消え去った時、


デルタ・ロークは初めて、
この美しい世界を観た。

第二詩篇


太古の森に香る苔の露を掃い、
眠りから覚めた男は世界樹に語る。


「其処の巨人よ…、
  お前は何故其処に眠るのか」


巨人は静かに
目を閉じたまま語った。


「私が眠ることで、
 この世界は始まりを告げる。
 私はこの世界を
 夢で紡ぎ続けるモノ…
 デルタローク、
 貴方は神々の戦いを観たか。
 ラグナロクを観たか、
 進軍のラッパを聴いたか?
 我等が子よ…
 貴方は、これから
 魂において
 それを観る事になる。
 それは、ひとかけらのパンを
 食べる間に終わる戦い…
 永遠に続く神々の黄昏、
 そして魂の復活を
 車輪は廻り、
 時と存在が流れ行く中で
 一つの存在が
 全ての存在となり
 存在の夢と私の観る夢が
 鎖となる時
 全ての存在の遺志を
 継ぐ覚悟だけを我に捧げよ
 他の貢物は要らぬ。
 私は鎔け去るが
 永遠に此処に在る、
 私はお前なのだ…
 デルタローク、
 今こそ永遠の旅を始める時
 心して歩むがよい…」
 
第三詩篇


盤古は今、
世界樹に鎔け
輝く黄金の葉は
永遠にざわめき
その全ては苔生す
幻惑の世界に漂う、
霞の甘き露となる。


幻影の谷を彷徨い続け
歩みを進めるたびに
渓流の如く時は流れゆく


大木の群れは
デルタロークが
歩くごとに
その瞳に残像を残して
幻惑の淵に誘う


葉の揺らぐ音を背にして
赤い地面に
視線を走らせると
デルタロークは
黒曜石を拾い上げ
指で砕いた。


空に向かい
黒く輝く粉を撒くと
粉は右の方向に流された
舞い散る粉が落ちる前に
杖で素早く絡め捕る。


「オンビシビシ
 カラカラシバリソワカ…」


すると突然、空中から
ひとりの美しい女性が
ポトリと地面に落ちた。


風の精霊は
苦しくて身動きがとれない…
息も幽かに語りかけた。


「クルシイ、早く
 呪縛を解いて。
 何でも望み通りにして
 差し上げます
 風は長い間、その場に
 とどまると死んでしまう
 ので、すから…」


デルタロークは縛りを解くと、
風に訊ねた。


「答えろ…
 世界が始まりを告げ
 時はどの程度、流れ去った」


風は喜びと
戸惑いの表情で言葉を返す


「このルールが成立してから
 140億年は過ぎました」


「そうか、すまなかったな。
 何処か好きな場所へ
 流れて行くがよい。
 私は時を訊ねるために
 貴方に声を掛けた
 それが望みだ、
 他に用は無い…」


風はデルタロークに
興味を持って近づいた。
それとも彼女の方に
吸い寄せられたのか
その緑の瞳が
虹色に変わる瞬間を
静かに眺めていた。


デルタロークは
面倒なコトになったものだと
心の中で呟いた。


風は朗らかに語る

「しばらく、
 一緒に歩きませんか?」


何を言っても無駄だと思いつつ
言葉を返す

「帰れ」


風は無邪気に微笑んで言った


「さて、私は何でしょう?
 何処にでも流れ
 常に何処にでも
 存在するモノです。
 私の家は此処です、
 だから、もう還っています…
 せっかく来たのだから、
 寄っていってもイイでしょう。
 ようこそ我が家へ、
 デルタローク!」
 

デルタロークは不機嫌に口を動かした


「それはクダラン理屈というモノ、
 不愉快だ
 退け!」


麗しく緑に光る風は、
そっと肩に手を置いて囁いた


「強がっても、ダメです…
 でも、もしかして
 私の言うこと、
 本当のコトだと思ってない?」


涼しい森をぬけると
草の流れる平原が一面に広がっていた。

淡い光のゆらめく緑を眺めながら
苦笑いを浮かべて、魔導士は思う。
(風と往く旅も悪くは無い…)


第四詩篇


時と風が旅を続ける世界は続く。


太陽が天翔る鳥達に乗り
飛び交う雲と虹を
安らぎと共に
仰ぐ場所があった。


楽園の女神は男に囁いた。


「私の愛するクルサースパ、
 貴方が心の底から
 望むものは
 永遠の生命ですか、
 それとも、永遠に
 語り継がれる名誉ですか?」


強靭な男は微笑みながら、
無邪気に返事をする…


「私は、あの太陽のように
 輝く栄光が欲しいよ」


母なる幸福の女神は答えを受けると
砂の様な声で呟いた


「本当に、それで、
 よいのですね…」


クルサースパは、
理想を語った
それは本当に望むものでは無かった
気がつくと女神は
其処から消えていた。


美しい恋人が
今までいた場所には、


火の神が
ひとり寂しそうに座っていた。



クルサースパが近づくと


立ち昇る紫の炎に
恨みを込めて
彼は、泣きながら
声を絞り出した。


「英雄よ、私の母を返せ…」



第五詩篇


かけがえの無いものを
求め続けて
クルサースパの戦いは終わった。


薄紫の光が漂う平原で
彼は、ある存在に語りかける。


「私は、あの人を探す旅を続けた…。
 あの世界で私が訪れぬ場所など
 ひとつも無かった。
 しかし、何処にもいない…」


蒼白い存在は下を指して、
微笑んだ。

「地中の宝のことかね…」


英雄は存在に導かれるまま、
煉獄へと落ちて往く


もう永遠の旅に執着は無い


ここで車輪がヒト廻り…


雷鳴が紫紺の空に響き渡り
悲しみの地中に
祝福の星が舞う


二人は幸福に包まれ
闇の揺り籠の中、


月と星が
ひとつに戻る


頭の上で音を立て


まわる玩具が
カラカラ、カラリ


全てのコトが、
ひと廻り…。


終わりは始まり、
始まりは終わり


時と風が旅を続ける世界は
永遠に続く。

by 護睡庵(春山信玄)  at 19:12 |  連載 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

「宇宙バイキング博士」

レポート1


時は旧地球暦三千六百年、
人類は宇宙に適応し
繁栄の極みを迎え…
無意味な戦争は消え去り、
千年の平和が人類に享受された。


しかし、平和の下で
苦悶する生物たちがいた。
永遠に崩れることの無い
コンクリートの下で、
ミミズから進化した
第二の知的生命体。


学名
「サンドワーム
サピエンス
サントリウム」


通称「艶かしき人々」
ミミズより進化した、
彼らの肌は滑らかで
姿かたちは人類と変わらない。
いや、むしろ高貴で美しい…
彼らは願いを込めて
人類に嘆願した。


「我々にも共に生きる
権利を与えてください」


太陽系元首、
ディ・アブロ・サロメは
地中の人々の
必死な願いをこう言って退けた。
「おろかな、ミミズ達…
下賎な蟲どもは
永久の闇の中で、
永遠に土を肥やすがよい」


慈悲も情けも無い言葉に
温厚なサントリウム達も
怒り狂った。


地下で千年蓄えた智慧を使い、
地球を内部から
巨大な要塞に作り変え
人類に全面戦争を仕掛けた。


泥沼の戦争は五十年続き、
今もまだ、砲撃が止む事は無い。


地球の暦で三千六百五十年…


人類世界に失望した
宇宙科学者、
「G・モルモット・B」は
太陽系人類連合の
中央ブレイン・システムである
「ハイランドの乙女」を複製し、
通信機能を追加して
オリジナルシステムを
自分の頭脳に埋め込んだ。
中央システムが送る
先端技術を手に入れ、
ついに…
傲慢な人類の鼻をへし折る、
地獄の戦艦
「ドゥルガー」を完成させた!

レポート2


プロフェッサー、
モルモットの戦艦は
従来の造船法を
全く無視した
画期的な
構築理論の元に創られた
C.W.S
(コスモロジカル・
ウォー・シップ)である!
 300年前に超絶科学者
デミットが開発した
『万物構成理論式を利用した
物質および精神の造成法』
カプセルに詰められ、
宇宙に追放された
彼の研究成果は
極秘裏に太陽系
中枢システムに
保管されていた。

完全に忘れ去られていた
究極理論方程式と
造成機構の設計図が
頭脳に埋め込まれた
永久起動型太陽系
自立情報制御プログラム
通称「ハイランドの乙女」を
通した、情報検索の
網にかかり
怒りの物理学者モルモットは
それを、ひとつの
手段として有効に利用した。


この戦艦、全長は
スーパーメガバースと同等で
質量も同等。
 しかし、縮小時の全長は
1プランク長である。

機械構造として
造られている場所は、
中央司令管制室
兼居住空間、80平方メートル


その周囲の物理法則は
宇宙定数の
部分的制御によって
造られる、完全なる
防御壁に護られている。
(通称 ケイオス オブ
 アビス シールド)


防御壁外部の構造は、
状況により
物質構築を行う事で
適当に変化させる
コトが可能。

司令室よりも空間が
縮小する場合は
防御壁ごと
13から1000以上の
並列次元を
巻き込むことにより、
通常空間を
低次元に圧縮する。
そのときには
戦艦の全長が
現行物理法則宇宙において、
1プランク長になる。


全ての制御と操作は
「ハイランドの乙女」が行なう。

「さあ、構築されし
美の女神よ…
超絶主砲『インフレーション・
ブラスター』で
驕り高ぶった、
太陽系人類に
眼にものを
見せてやるのだ
さあ、覚悟は良いかぁ、
冥土の土産を
喰らうがイイ…
おのれ、己らがぁ
ぬををぉぉぉぉぉぉぉぉっ
ダァァァァァァァァアァイ
撃てぇぇぇぇぇぇぇっ!」


(プロフェッサー、
ソレは私が
許可しないノデ
実行不能です)

「そんなバカなぁっ、
ナゼだ?」


(プロフェッサー
インフレーション・
ブラスターは
危険です)

(A粒子の軌道上に
定数操作を行い
レールを敷きマス)


(レールを伝わり粒子が
最高速度で目標を
破壊しマス)


(現在の設定最高速度は
光速の365乗の
365乗デス)


(この宇宙は粒子発射の
衝撃によって
崩壊シマス)


(適切な数値の設定は
以後、ワタシに任せて
イタダキマス)


「どうして?」

(この宇宙が消えると
いうコトは
貴方とワタシも
消えるというコト)


(それはイヤです…)


「なるほど、それもそうだ
もっともな意見だ、解った。
全面的に許可する!」


そうして、地獄の戦艦は
意図的に低速を保ち
最終到達地点を目指す
最短航路をとる


太陽系中枢都市型惑星
「ブラッドオブアース」


はたして、人類のみが
平和に暮らす世界は


怒れるマッド・
サイエンティストの
頭脳によって
一瞬のうちに
焼き尽くされるので
あろうか?

その頃、サロメ直属
巨大艦隊の
量子レーダーに
不審な反応数値が
測定された。


無敵艦隊は
緊急戦闘配備について
待ち伏せの
体制を整える。


しかし、それは
プロフェッサーによって
完全に張り巡らされた
罠だった…

レポート3


おとりに
宇宙船のダミーを残し
空間転送装置を使い
人工惑星に立ち寄った
プロフェッサーは
酒場で酒を飲んでいた。


隅の方で、
あらそう声が
聞こえてきたが
関係ないので
無視していると
可愛い女性の声がする。

「やめて下さい、
私が何かしましたか?」


「お前、ミミズ人間の
分際で なぜ
此処にいる?」


「私だって、わたしだって
好きでこんな場所に
いるわけじゃ無いわ!」


男がグラスを掴み、
女性に投げつけようとした
瞬間に、
プロフェッサーの肩に
装備された
素粒子ガトリングキャノンが
何億もの閃光を放った。

音も無く
一瞬のうちに
無礼な男が
跡形も無く消え去ると


女性は言った。
「ありがとうございます!
しかし、あの…
スミマセン
何でも、無いです」


プロフェッサーは
笑っているのか、
怒っているのか
全く分からない
表情で思った。
このヒトは、なんて
美しい姿をしているのだ。

(プロフェッサー、
モシカシテ惚れまシタカ?)

無言でウナズクと
女性に尋ねた。
「捕虜として
連れてこられて
売られたという
トコロか…
名前は、
何というのかね?」


「フォルクロール・
エル・フローレ」


「最初の部分は
人類が憑けた名前か、
本名は、
エル・フローレか」


「はい…」

「こんな所にいても、
地獄を
味わうだけだろう。
私と一緒に
来ないかね?」


「え?」


「此処で悲しく
最後を迎えるか
私の船に乗って
茶でも飲みながら
テレビを一緒に見て
暮らすか
どちらかを選べと
言っているのだよ…」


フローレは一瞬、
考えてから
プロフェッサーの
眼を見て言った。


「もう、悲しいのは
嫌です…。
喜んで、ついて行くわ」


「決まりだな、
ぬははは!
ハイランドの乙女よ
居住空間への
転送よろしく」
(了解シマシタ、
プロフェッサー)

そして、宇宙船に戻った
プロフェッサーが
脳裏に浮かぶ、
頭脳レーダーを眺めると


サロメ軍の
待ち伏せの態勢が
十分に整っている事が
分かった。


フローレが
イスに腰をかけて
プロフェッサーを
不思議そうに、
眺めていると


彼は不敵な笑みを
浮かべながら
ひとり、言葉を
吐き出した。


「良く統率されては
いるが…
戦術が、なって無い。
宇宙で私を相手に
待ち伏せなんぞ、
できるはずが
無いであろうが!」

レポート 4


プロフェッサーは
頭脳レーダーの複製品を
宇宙船のテレビに
映し出して言った。
「フローレよ、
これが宇宙全域の
レーダーだが
何か解るかね?」


「父が軍人なので
少しは解ります、
それよりオジサン…
アナタのことは
なんと呼べばいいの?」


「オジサンではない
プロフェッサーと呼べ!」


「あははっ、解りました
プロフェッサー!」


プロフェッサーはニヤリと
爽やかに笑うと
テレビの紅い点を指して言う


「此処が敵の根城だ。
サロメのバカは此処におる」


「ここに、いるのね…」


「それで現在の敵が
この無駄に固まった黄色だ。
此処に沢山待ち伏せ
しているのが解るだろう?」


フローレは敵の数を数えて
眼を円くして叫んだ。

「無理よ、殺されるわ
こんなにいるなんて。
大きな戦艦が、沢山…」


「まあ、普通は
大型艦が千もいたら
勝ち目は無いのだが。
この船は普通じゃないから
他の戦艦は雑魚以下だ
まあ、そのモニターに
映すから、
暇つぶしに
菓子箱の煎餅でも
ボリボリ食べながら
戦い方をみていればいい」


「そのお煎餅っていうモノは
これですか、美味しそう。
解りましたプロフェッサー」

「それは、いいヤツだから
マズイという事は無い」


そう言うと
プロフェッサーは
ビールの空き瓶を
1ケース丸ごと担いで
戦艦ドゥルガーの
甲板に空間移動した。


プロフェッサーは
宇宙服も着ずに
甲板に出ると、
肩に担いでいた
ケースから
ビール瓶を四本
取り出した。

「ハイランド、
状況を報告してくれ」

(プロフェッサー、
敵艦隊マデノ距離ハ
600キロメートル、
敵艦ノ動力ハ
中央に在ル母艦ガ
供給シテイマス)

プロフェッサーの
脳内に埋め込まれた
究極演算装置が、
そう伝えると

彼は自分の体に
内蔵された
動力増幅装置を
3パーセントだけ
稼動させた。
これにより腕力が
少しだけ
補強されるのである。

戦艦ドゥルガーの
完成と共に
彼は体の全てを
兵器として
創り直している。

つまり彼自身が
究極戦艦と同じ程度の
破壊力を持った
究極兵器なのだ。


プロフェッサーは、
ビール瓶を掴み
敵艦隊の中心に向って
投げつけた。

投げた瞬間に
ビール瓶が

凄まじい重力波と共に
砕け散る

その6秒後

時空が歪むほどの衝撃が

敵艦隊の中心部を襲った

小さな爆発の後

蒼い光が内側に
引き込まれている光景が
遠くに見えた

母艦の動力源
ブラックホールエンジンが
重力崩壊を起こしたのだ。

「ハイランド、危険だ。
アレを何処かに飛ばせ」

(了解、他ノ遠イ銀河系ニ
 転送シマス)

ブラックホールの
出来損ないが
他の場所に転送されると
システムインターフェイスの
ハイランドは言った。

(プロフェッサー、
 最初カラ転送スレバ
 ヨカッタノデハ?)

「いや、これでいい。
ストレス解消に
なったからな、
人間には無駄を楽しむ
心というモノがあるのだよ
分るかね?」

(機械ノワタシニハ
ワカリマセン…)

プロフェッサーが
最強戦艦の居間に戻ると
お煎餅を齧りながら
船外の様子をTVで観ていた  
フローレは目をまるくして
大きな声で叫んだ。

「ちょっと!
 オジサンどういう
 腕力してるのっ
 何か手で投げただけで
 解らないけど、敵艦隊が
 凄いことになったわ…」

プロフェッサーは
眉間にシワを寄せて言った。

「腕力ではない、科学力だ。
 それにオジサンではない。
 プロフェッサーと呼べ」

その後しばらく
何も思いつかなかったので
フローレと二人で、
お茶を飲んでいると

脳内演算装置ハイランドが
プロフェッサーに語りかけた

(プロフェッサー、
 ワタシヒマデス)

(タイクツナノデ行動ノ
 指針ヲ、オネガイシマス)

「あ、スマン。
 それで何が目的だったのだ?」

(太陽系元首ノトコロニ
 ムカウノデハ…)

プロフェッサーは少し考えると
ハイランドに指示を出した。

「そんなに急ぐコトも無いが…
 急ぎたいなら早いほうがイイ。
 ふふふ、元首の元に私を
 今すぐ転送しろっ」

その瞬間、
フローレがすかさず
振り向いて言った

「そんなコトできるんですかっ!」

その声を聞いた
プロフェッサーは
ニヤリと笑い
大きく口を動かして答えた


「この宇宙に
 不可能なコトなど…
 無いっ!」

ぬはははという
低い笑い声を残して

ハイランドによって
プロフェッサーの体は
物質の最小単位まで
分解され、周りの時空が
幾重にも折り曲げられて
グォンという音が
一瞬だけした後に
跡形も無く遠くの方に
転送されていった。

ひとり艦内に取り残された
フローレは、
新しい煎餅を出して
お茶を飲みながら
一人で呟いていた。

「おーい、オジサーン…
 ホントに消えちゃったわ。
 私に、できることは
 TVを何となく
 寝転がりながら観るとか。
 この、オジサンが
 食べろと言った
 お煎餅を、できるだけ
 沢山食べてみるとかっ
 あ、ゲーム機を発見!
 オジサンっ…
 私、何とか頑張って
 この船の留守を守ります
 だからオジサンも頑張って」

その後暫く、煎餅の音と
ゲームの音楽が鳴り響き。


一人しかいない
居間にしては
意外と賑やかな光景が
艦内映像記録のデータが
記憶装置を通して
プロフェッサーの
脳内に転送されていた。

その光景を観て
宇宙の彼方に
転送されながら
プロフェッサーは
こう想った


フローレ、
オジサンっ
オジサンって
人の話を聞いて
いなかったのか。
テーマ: 自作連載小説 -  ジャンル: 小説・文学
by 護睡庵(春山信玄)  at 19:13 |  連載 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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