2007/11/12
魔法仙人の弟子
その昔、モテナイとか
色々な理由で
世の中が
気に入らなかった護睡庵は
魔術で宇宙を消し去ろうと
秘術の限りを尽くしましたが
見事大失敗して
錬金術師の何とか君と
似た様な状態になりました。
反省した護睡庵は、
こう呟きました。
「きっと、魔法に対する
理解が足りないからだ…」
十分な思案の末、
裏の世界で有名な
大観音山脈に
向かうことになりました。
山道を歩いていると
ヒョッコリ現れるという
魔法仙人
「ヘルガイスト・デルタ・ローク」に
魔法のことを教えてもらおうと
思ったからです…
山の中腹にある
カルデラの湖で
お腹が減った護睡庵は、
ソウ魚でも食べようと
思いましたが
残念ながら
魚は一匹もいません。
向こう岸に子供がいたので、
ご飯を貰おうと思い
話しかけました。
角が生えた子供だったので、
こう褒めてあげました。
「その角、カッコいいですね。
美味しいものを
食べさせて貰えませんか」
子供はそれを聞くと
笑顔で言いました。
「これの良さが判るのか、
お前、見所あるじゃねぇか…
何処から来やがった」
驚いた護睡庵は
心を落ち着けて、
答えました。
「ジャパーン!」
子供は笑って言いました。
「黙れ無明が…!」
反省した護睡庵は、
本題に入ろうと考えて
話を仕切り直します。
「貴方が
ヘルガイスト・
デルタ・ローク君ですか
全粒子を崩壊させる
呪法を教えて
頂きたいのですが」
デルちゃんは
アキレタ顔で言いました。
「お前、古文書の呪法とか
鵜呑みにするタイプだろ。
愚か者が、
いちいち魔法の本質から
説明してやらなきゃ
ならねぇのか…、
めんどくさい。
何か授業料をよこせ」
護睡庵がポケットを漁ると、
金柑のど飴が
入っていたので
デルちゃんの手のひらに
そっと、おいてあげました。
「仙人様は
ご存知ないでしょうが、
この美しい石は
現代における人界の
秘宝中の秘宝…
全人類の英知の結晶です。
全ての生命と
喜びの心を凝縮した、
『蜜の宝珠』というモノで
御座います…
人の身で、
これ以上のモノを
用意するコトは
難しい。
宜しければ、
これをお納め下さい…」
デルちゃんは興味深々です。
眼が輝いています…
「ドウ使うんだ、これ…」
護睡庵は親切に
説明してあげます。
「舌の上に置いて
コロコロすると、
至福の蜜が
体中に流れ往くのです」
デルちゃんは、
ニヤニヤしながら
護睡庵の肩に手を置いて
言いました。
「良いものをアリガトウ、
明日から教えて進ぜよう!」
昨日デルタローク城に
泊めて貰った護睡庵は
しばらくの間、
ご厄介になる事にしました。
誰もいないので
茶の間のコタツの中に
モグッテ遊んでいると
城の主が起きて来ました。
今日のデルちゃんは
飴を貰ったので、
機嫌が良くて
何でも喋りそうです。
護睡庵は
笑顔を視ているのも
厭きたので
こう訊ねました。
「待ちくたびれたので、
早く教えてくださいな☆」
デルちゃんは仏頂面になって、
怒りを込めて言いました。
「蚯蚓の王が…、
てめえは
世の中の
何が
気に
入らないんだ?」
護睡庵は0.1秒考えて
答えました。
「個別に観ると
最高に素晴らしいのに、
全体を観ると
手に負えないので
腹が立つし
自分も含めて
気にいらない。
どうにかしようと
頑張ってみたのですが
上手くいかなかったので、
今反省している所です☆」
デルちゃんは
ニヒルなアヒルのように
笑って言いました。
「その考え方が、
魔術師としての
最初の一歩なんだけどねぇ…」
護睡庵は、
すかさず質問しました。
「次の一歩は何ですか、
最終的にはどうなるのどナルド?」
異様につぶらで
大きい瞳が妖しく光り…
デルちゃんは、
静かに呟きました。
「黙れ、北京ダック…。
ひとつの方向でダメなら、
別の方向に同時に進め。
歩く時は無理だが、
思念を全ての方向へ
同時に向わせるコトは
不可能では無いのだ。
まずは心に方向を与えろ。
例えば、瞳を閉じた時。
斜めも含む全ての場所へ
遥か遠くの山を
見るくらいの距離に
数字をイメージしてみなさい
イメージだから何処まで
小さくしても見えるはずだ…
後方は難しいが、
やって出来ない事も無い。
馴れないうちは
正面と同じ位置か
中心に数字が浮かぶはずだ
浮かんだらディメンダーが
後ろ側にいて
吸い取られている感じにすると
数字の奥行きが
拡がるのだ…」
「全ての方向に川を作り、
その流れを
活用するのが魔法だ。
堰き止めるだけでも
ヤバイのに、
魔力の源を消そうとして
無事で
済むわけ無いでしょが、
馬鹿め…」
護睡庵は、
しょぼくれて言いました。
「テレッテー、
テレ、テレッテ。
馬鹿だもん…」
デルちゃんは
正露丸を噛み潰したような顔で
問いました。
「てめえ、
本は読むのか?
おもしれぇと思ったものは
何だ、言え…」
護睡庵は随分と
口が悪い子だなと
思いながら
答えました。
「ポール・アンダースンと
アラビアンナイト、
立川談志遺言大全集とか」
それを聞いたデルちゃんは
急に優しくなりました。
「それじゃ、あれか。
最初の何分かを待てる
粋なタイプの人間ってことか
オレが昔、寄席で行った時
そうだったからね。
気が合いそうじゃねぇか…」
デルちゃんは笑顔で
何処からか
『ゲーテ詩集』を取り出すと
護睡庵の手のひらに
置いてくれました。
「今のお前に必要なのは、
この中にある
『宝堀り』という詩だ。
魔法に関しての
最初の心得が
載っているから」
護睡庵が読んでみようと
表紙に右手の親指を
のばした瞬間…
デルちゃんが眼にも
とまらぬ速さで
本を手のひらから
引ったくりました。
「偉大なゲーテは言いました。
『金あるものは使うべし』
値段は420円☆」
護睡庵は泣きそうになって
心の中で叫びました。
「お金無い」
色々な理由で
世の中が
気に入らなかった護睡庵は
魔術で宇宙を消し去ろうと
秘術の限りを尽くしましたが
見事大失敗して
錬金術師の何とか君と
似た様な状態になりました。
反省した護睡庵は、
こう呟きました。
「きっと、魔法に対する
理解が足りないからだ…」
十分な思案の末、
裏の世界で有名な
大観音山脈に
向かうことになりました。
山道を歩いていると
ヒョッコリ現れるという
魔法仙人
「ヘルガイスト・デルタ・ローク」に
魔法のことを教えてもらおうと
思ったからです…
山の中腹にある
カルデラの湖で
お腹が減った護睡庵は、
ソウ魚でも食べようと
思いましたが
残念ながら
魚は一匹もいません。
向こう岸に子供がいたので、
ご飯を貰おうと思い
話しかけました。
角が生えた子供だったので、
こう褒めてあげました。
「その角、カッコいいですね。
美味しいものを
食べさせて貰えませんか」
子供はそれを聞くと
笑顔で言いました。
「これの良さが判るのか、
お前、見所あるじゃねぇか…
何処から来やがった」
驚いた護睡庵は
心を落ち着けて、
答えました。
「ジャパーン!」
子供は笑って言いました。
「黙れ無明が…!」
反省した護睡庵は、
本題に入ろうと考えて
話を仕切り直します。
「貴方が
ヘルガイスト・
デルタ・ローク君ですか
全粒子を崩壊させる
呪法を教えて
頂きたいのですが」
デルちゃんは
アキレタ顔で言いました。
「お前、古文書の呪法とか
鵜呑みにするタイプだろ。
愚か者が、
いちいち魔法の本質から
説明してやらなきゃ
ならねぇのか…、
めんどくさい。
何か授業料をよこせ」
護睡庵がポケットを漁ると、
金柑のど飴が
入っていたので
デルちゃんの手のひらに
そっと、おいてあげました。
「仙人様は
ご存知ないでしょうが、
この美しい石は
現代における人界の
秘宝中の秘宝…
全人類の英知の結晶です。
全ての生命と
喜びの心を凝縮した、
『蜜の宝珠』というモノで
御座います…
人の身で、
これ以上のモノを
用意するコトは
難しい。
宜しければ、
これをお納め下さい…」
デルちゃんは興味深々です。
眼が輝いています…
「ドウ使うんだ、これ…」
護睡庵は親切に
説明してあげます。
「舌の上に置いて
コロコロすると、
至福の蜜が
体中に流れ往くのです」
デルちゃんは、
ニヤニヤしながら
護睡庵の肩に手を置いて
言いました。
「良いものをアリガトウ、
明日から教えて進ぜよう!」
昨日デルタローク城に
泊めて貰った護睡庵は
しばらくの間、
ご厄介になる事にしました。
誰もいないので
茶の間のコタツの中に
モグッテ遊んでいると
城の主が起きて来ました。
今日のデルちゃんは
飴を貰ったので、
機嫌が良くて
何でも喋りそうです。
護睡庵は
笑顔を視ているのも
厭きたので
こう訊ねました。
「待ちくたびれたので、
早く教えてくださいな☆」
デルちゃんは仏頂面になって、
怒りを込めて言いました。
「蚯蚓の王が…、
てめえは
世の中の
何が
気に
入らないんだ?」
護睡庵は0.1秒考えて
答えました。
「個別に観ると
最高に素晴らしいのに、
全体を観ると
手に負えないので
腹が立つし
自分も含めて
気にいらない。
どうにかしようと
頑張ってみたのですが
上手くいかなかったので、
今反省している所です☆」
デルちゃんは
ニヒルなアヒルのように
笑って言いました。
「その考え方が、
魔術師としての
最初の一歩なんだけどねぇ…」
護睡庵は、
すかさず質問しました。
「次の一歩は何ですか、
最終的にはどうなるのどナルド?」
異様につぶらで
大きい瞳が妖しく光り…
デルちゃんは、
静かに呟きました。
「黙れ、北京ダック…。
ひとつの方向でダメなら、
別の方向に同時に進め。
歩く時は無理だが、
思念を全ての方向へ
同時に向わせるコトは
不可能では無いのだ。
まずは心に方向を与えろ。
例えば、瞳を閉じた時。
斜めも含む全ての場所へ
遥か遠くの山を
見るくらいの距離に
数字をイメージしてみなさい
イメージだから何処まで
小さくしても見えるはずだ…
後方は難しいが、
やって出来ない事も無い。
馴れないうちは
正面と同じ位置か
中心に数字が浮かぶはずだ
浮かんだらディメンダーが
後ろ側にいて
吸い取られている感じにすると
数字の奥行きが
拡がるのだ…」
「全ての方向に川を作り、
その流れを
活用するのが魔法だ。
堰き止めるだけでも
ヤバイのに、
魔力の源を消そうとして
無事で
済むわけ無いでしょが、
馬鹿め…」
護睡庵は、
しょぼくれて言いました。
「テレッテー、
テレ、テレッテ。
馬鹿だもん…」
デルちゃんは
正露丸を噛み潰したような顔で
問いました。
「てめえ、
本は読むのか?
おもしれぇと思ったものは
何だ、言え…」
護睡庵は随分と
口が悪い子だなと
思いながら
答えました。
「ポール・アンダースンと
アラビアンナイト、
立川談志遺言大全集とか」
それを聞いたデルちゃんは
急に優しくなりました。
「それじゃ、あれか。
最初の何分かを待てる
粋なタイプの人間ってことか
オレが昔、寄席で行った時
そうだったからね。
気が合いそうじゃねぇか…」
デルちゃんは笑顔で
何処からか
『ゲーテ詩集』を取り出すと
護睡庵の手のひらに
置いてくれました。
「今のお前に必要なのは、
この中にある
『宝堀り』という詩だ。
魔法に関しての
最初の心得が
載っているから」
護睡庵が読んでみようと
表紙に右手の親指を
のばした瞬間…
デルちゃんが眼にも
とまらぬ速さで
本を手のひらから
引ったくりました。
「偉大なゲーテは言いました。
『金あるものは使うべし』
値段は420円☆」
護睡庵は泣きそうになって
心の中で叫びました。
「お金無い」




