2007/11/12
虹色のエリクシル
万能なる秘薬なぞ、
この世に在る訳が無かろう…
あなた方が
求めているものは
本当に…
つまらない、タダの幸福
そして、
最後の最後に
私の求めるモノも
その、つまらない
幸福なのかも知れない
絶対に認めたくは
無いのですが…
愛すべき者 シャヘルより、地上へ
前夜
エイミーは日々の生活に
嫌気がさしていた。
毎日、道端で
花や、役にも立たない雑貨を売り
元締めに絞られて
ろくな稼ぎにも、ならない。
夜に眠る時は毛布も無く
寒くて死にそうになる
いや、実際に
死んでしまった仲間もいた。
「このままでは、いけないわ。
せめて、毛布の一枚くらい
貸してもらわなければ…
死ぬ」
彼女は三日前から
食事を与えられていない。
元締めのフランクは言う
「ろくに儲けも無い小娘に
食わせるものは無い、
食いたければ働け」
とりあえず、今は寒さを
どうにかしないと、
明日の朝には
不幸なことになる。
「フランクさん、私は寒くて
凍えて…。
このままでは、
死んでしまいます。
お願いです
毛布を一枚だけ貸して
いただけませんか…」
埃まみれの娘は
丁寧な言葉で
心から願った。
しかし、返事は残酷なものだった
「毛布は貸し出し制度だ、
一日銅貨一枚だが
お前に払うことが出来るのか」
エイミーはフランクを
憎しみの眼で睨み
激しく抵抗した。
「私は大切な家族を
二年前に亡くして
町で途方に暮れている所に
あなたが現れて、
無理やり連れて来られて
働いていますが…」
「この二年間は、私の
人生の中で最悪でした
私の自由を返して下さい!」
「今すぐ…
私は、この仕事をやめます!
ここの生活よりは
宿の無い生活の方がいい!」
フランクは不機嫌な顔で
噛み煙草を吐き出し、
こう言い放った。
「そうかい、随分強く出たねぇ
そいつは、また…
おもしろい冗談だ、
来た時、契約書に
サインしたよな。
あと一年、こき使わせてくれよ。
へっ、金貨でも持ってくれば
話は別だが…、無理だろうな」
街頭の雑貨売りくらいでは
金貨を手に入れることは難しい。
フランクは、
それを分かっていながら
嫌がらせに
この条件を突きつけて
遊ぶことが、
つまらない毎日の
日課になっていた。
「そう…、
金貨さえ渡せば良いのね。」
「私に一週間の休みを下さい!
その間に金貨を手に入れて
あなたに渡せば良いでしょう…
それで私を自由にして!」
彼女は自分の
口から出た言葉に驚きながら
奥歯をかみ締め
男を睨みつけている。
「は、分かった分かった。
金貨が手に入るなら
休みをやるよ…。
しかし、逃げたら
酷い目に合わせてから
人買いに売るぞ…」
エイミーは、一言呟いた
「私は、逃げたりなんてしない、
卑怯者…」
気がつくと、鉄の窓枠が
白い光を反射させていた
今の若い娘には
耳障りな…
小鳥の声が遠くで聴こえる
夜が明けて、
朝が始まりを告げた。
冥府の魔軍は、
あらかた倒したのですが
いと高き空の上で
悪竜ダハーカに
不覚をとりましたよ
管理者エルバザエルに
我が星の力を奪われました。
奴が冥府側から
送り込まれた裏切り者です。
私のかわいい弟に
知らせておいてください
奪われた力の所在を
探させるのです。
彼には、我々の計画を
全て伝えてありますからね
星の力が無ければ
僕は冥府の魔性に
対抗できないでしょう
それと、神鉄の鎖と
檻を用意してください。
それでは、また手紙を書きます
愛すべき方に シャヘルより 天界へ
一日
今から七日間の間に金貨を
手に入れなければならない…
エイミーは町の中心を走る
大通りに続く細道を
とぼとぼと歩いて行った。
何のあても無く
ただひたすら考えながら歩く。
脳裏に浮かぶ思念が
まとまらないうちに
大通りに着いてしまった。
「これから、どうしよう…」
彼女は裾の破れたスカートを
折り曲げて、屈み込んでしまった。
何も思いつかない…
すると、座り込んだ彼女を
明るい影が包みこむ
顔を上げて後ろを見ると
黒いシルクハットに、
黒いマントの男が
エイミーに笑いかけた
「お困りのようですね、
私でよければ、力になりますが
御嬢さん…」
彼女は思った。
これが噂に聞く
人買いというモノではないか…
この男は怪しすぎる。
しかし、帽子の下の眼が
美しく澄み渡っている
それは人間ではない
別の何かの気配が
宿っているようでもあった。
彼女は疑いながらも
彼の眼に惹かれていた。
「あなたは、人買いでは
ありませんよね…
本当に力になって
下さるのですか?」
男は微笑みながら、
エイミーの眼を見つめて答えた
「私は、あと七日間
こちらにいられるのでね…
ちょっとした気まぐれで
何か人助けが、
したくなっていた所に君が
うずくまっていたものだから、
適当に声をかけたのだ」
彼が名前を言わないので
彼女は名前を訊ねた…
「私はエイミーといいます。
あなたのことは何と呼べば
よろしいのでしょうか?」
男は困った顔をして答える
「名前は色々あるが、
そうだな、他の国では
シャヘルと呼ばれていたから
そう呼んでくれていいよ。
この名前は気に入っているんだ」
エイミーは随分と変わった
名前だと思った。
異国から来た旅人なのだろうか
この辺りは昔から
交易の盛んな土地だったので
めずらしい名前は気にならなかった。
孤立無縁のエイミーは
しばらく考えてから
彼に助けてもらうことにした。
この世に在る訳が無かろう…
あなた方が
求めているものは
本当に…
つまらない、タダの幸福
そして、
最後の最後に
私の求めるモノも
その、つまらない
幸福なのかも知れない
絶対に認めたくは
無いのですが…
愛すべき者 シャヘルより、地上へ
前夜
エイミーは日々の生活に
嫌気がさしていた。
毎日、道端で
花や、役にも立たない雑貨を売り
元締めに絞られて
ろくな稼ぎにも、ならない。
夜に眠る時は毛布も無く
寒くて死にそうになる
いや、実際に
死んでしまった仲間もいた。
「このままでは、いけないわ。
せめて、毛布の一枚くらい
貸してもらわなければ…
死ぬ」
彼女は三日前から
食事を与えられていない。
元締めのフランクは言う
「ろくに儲けも無い小娘に
食わせるものは無い、
食いたければ働け」
とりあえず、今は寒さを
どうにかしないと、
明日の朝には
不幸なことになる。
「フランクさん、私は寒くて
凍えて…。
このままでは、
死んでしまいます。
お願いです
毛布を一枚だけ貸して
いただけませんか…」
埃まみれの娘は
丁寧な言葉で
心から願った。
しかし、返事は残酷なものだった
「毛布は貸し出し制度だ、
一日銅貨一枚だが
お前に払うことが出来るのか」
エイミーはフランクを
憎しみの眼で睨み
激しく抵抗した。
「私は大切な家族を
二年前に亡くして
町で途方に暮れている所に
あなたが現れて、
無理やり連れて来られて
働いていますが…」
「この二年間は、私の
人生の中で最悪でした
私の自由を返して下さい!」
「今すぐ…
私は、この仕事をやめます!
ここの生活よりは
宿の無い生活の方がいい!」
フランクは不機嫌な顔で
噛み煙草を吐き出し、
こう言い放った。
「そうかい、随分強く出たねぇ
そいつは、また…
おもしろい冗談だ、
来た時、契約書に
サインしたよな。
あと一年、こき使わせてくれよ。
へっ、金貨でも持ってくれば
話は別だが…、無理だろうな」
街頭の雑貨売りくらいでは
金貨を手に入れることは難しい。
フランクは、
それを分かっていながら
嫌がらせに
この条件を突きつけて
遊ぶことが、
つまらない毎日の
日課になっていた。
「そう…、
金貨さえ渡せば良いのね。」
「私に一週間の休みを下さい!
その間に金貨を手に入れて
あなたに渡せば良いでしょう…
それで私を自由にして!」
彼女は自分の
口から出た言葉に驚きながら
奥歯をかみ締め
男を睨みつけている。
「は、分かった分かった。
金貨が手に入るなら
休みをやるよ…。
しかし、逃げたら
酷い目に合わせてから
人買いに売るぞ…」
エイミーは、一言呟いた
「私は、逃げたりなんてしない、
卑怯者…」
気がつくと、鉄の窓枠が
白い光を反射させていた
今の若い娘には
耳障りな…
小鳥の声が遠くで聴こえる
夜が明けて、
朝が始まりを告げた。
冥府の魔軍は、
あらかた倒したのですが
いと高き空の上で
悪竜ダハーカに
不覚をとりましたよ
管理者エルバザエルに
我が星の力を奪われました。
奴が冥府側から
送り込まれた裏切り者です。
私のかわいい弟に
知らせておいてください
奪われた力の所在を
探させるのです。
彼には、我々の計画を
全て伝えてありますからね
星の力が無ければ
僕は冥府の魔性に
対抗できないでしょう
それと、神鉄の鎖と
檻を用意してください。
それでは、また手紙を書きます
愛すべき方に シャヘルより 天界へ
一日
今から七日間の間に金貨を
手に入れなければならない…
エイミーは町の中心を走る
大通りに続く細道を
とぼとぼと歩いて行った。
何のあても無く
ただひたすら考えながら歩く。
脳裏に浮かぶ思念が
まとまらないうちに
大通りに着いてしまった。
「これから、どうしよう…」
彼女は裾の破れたスカートを
折り曲げて、屈み込んでしまった。
何も思いつかない…
すると、座り込んだ彼女を
明るい影が包みこむ
顔を上げて後ろを見ると
黒いシルクハットに、
黒いマントの男が
エイミーに笑いかけた
「お困りのようですね、
私でよければ、力になりますが
御嬢さん…」
彼女は思った。
これが噂に聞く
人買いというモノではないか…
この男は怪しすぎる。
しかし、帽子の下の眼が
美しく澄み渡っている
それは人間ではない
別の何かの気配が
宿っているようでもあった。
彼女は疑いながらも
彼の眼に惹かれていた。
「あなたは、人買いでは
ありませんよね…
本当に力になって
下さるのですか?」
男は微笑みながら、
エイミーの眼を見つめて答えた
「私は、あと七日間
こちらにいられるのでね…
ちょっとした気まぐれで
何か人助けが、
したくなっていた所に君が
うずくまっていたものだから、
適当に声をかけたのだ」
彼が名前を言わないので
彼女は名前を訊ねた…
「私はエイミーといいます。
あなたのことは何と呼べば
よろしいのでしょうか?」
男は困った顔をして答える
「名前は色々あるが、
そうだな、他の国では
シャヘルと呼ばれていたから
そう呼んでくれていいよ。
この名前は気に入っているんだ」
エイミーは随分と変わった
名前だと思った。
異国から来た旅人なのだろうか
この辺りは昔から
交易の盛んな土地だったので
めずらしい名前は気にならなかった。
孤立無縁のエイミーは
しばらく考えてから
彼に助けてもらうことにした。




