2008/07/03
春山外伝「幻術士の敗北」
これは春山信玄が、
まだ若い頃の話。
三流幻術士の春山は
御堂の方角に向かい
静かに歩きながら
呪文を謳うと
ヴァルキリーの女王を
召喚した。
「もう僕は我慢がならない。
だから話を聞いて、
納得出来ぬようなら…」
(無理なコトだけど、付き合うわ)
幻影の女神は優しく頷いた。
聖天御堂に入ると
春山は静かに
語り始める。
「訪ねたいことがあります。
近頃…
学問の無理解によって、
破滅する人間が多い。
素直な人ほど、
言葉の魔力に巻き込まれ
奈落の底に堕とされる。
現代の学問が
闇にしか見えないのは
何故ですか?」
御堂の扉が
音も無く閉まる。
「歓心な問い、
清濁陰陽を分ける事
穢れの始まり、
人は穢れを避け、
その故に穢れる。
知る故に言葉無く、
知らぬ故に語る。
知らぬ故に心在り、
知る故に心無し。
穢れ無き者に心無し、
汝自身を知れ」
その答えを聞いて
春山は困ったような
顔で笑い敗北を認める。
「参りました」
御堂から出て
最寄の駅まで続く
長い道を歩いて往く。
溝の流れる音と
虫の美しく鳴く中で
荒れた畑に芒が揺れて
秋の風が空しく過ぎ去る
季節に月を眺めて呟いた。
「遥か幻影、夢の夢。
風の吹く中、堂々巡り
知恵は在るのか
無いモノなのか
莫迦な僕には分らにゃい」
完
まだ若い頃の話。
三流幻術士の春山は
御堂の方角に向かい
静かに歩きながら
呪文を謳うと
ヴァルキリーの女王を
召喚した。
「もう僕は我慢がならない。
だから話を聞いて、
納得出来ぬようなら…」
(無理なコトだけど、付き合うわ)
幻影の女神は優しく頷いた。
聖天御堂に入ると
春山は静かに
語り始める。
「訪ねたいことがあります。
近頃…
学問の無理解によって、
破滅する人間が多い。
素直な人ほど、
言葉の魔力に巻き込まれ
奈落の底に堕とされる。
現代の学問が
闇にしか見えないのは
何故ですか?」
御堂の扉が
音も無く閉まる。
「歓心な問い、
清濁陰陽を分ける事
穢れの始まり、
人は穢れを避け、
その故に穢れる。
知る故に言葉無く、
知らぬ故に語る。
知らぬ故に心在り、
知る故に心無し。
穢れ無き者に心無し、
汝自身を知れ」
その答えを聞いて
春山は困ったような
顔で笑い敗北を認める。
「参りました」
御堂から出て
最寄の駅まで続く
長い道を歩いて往く。
溝の流れる音と
虫の美しく鳴く中で
荒れた畑に芒が揺れて
秋の風が空しく過ぎ去る
季節に月を眺めて呟いた。
「遥か幻影、夢の夢。
風の吹く中、堂々巡り
知恵は在るのか
無いモノなのか
莫迦な僕には分らにゃい」
完




