春山対信長

春山対信長 つづき


お腹が減ったと
姉のエイコが言うので
バーべキューをする事になった。

信虎と春山信玄は
肉だけの串に噛り付きながら

仲良く話をした。

「信じられぬが、春山よ。
 うぬが、武田一族の子孫を
 名乗るからには答えられる
 筈じゃろうて、誰の子孫じゃ?」

春山は待ってましたと
言わんばかりの
得意満面な笑顔で
声高らかに答えた。

「あんた、驚くぞ!
 答え、それは信虎さんでーす。
 武田信虎様に
 天下を統一して頂こうと、
 未来の国から来ましたっ」

信虎は豪快に笑い飛ばすと
愉快そうな顔で言った。

「うむ、易々と納得は出来ぬが
 その志は酌んでやろう。
 春山とやら、わしの家来になれ」

春山信玄は、
これで適当に
天下を統一してから。

領土を春山信玄に直接、
繋がる先祖達に多く与えて。

その後、現代に戻れば
自分が凄まじいほどの
金持になっていて、
それこそ金の力で
凄まじくモテる筈だと思った。

冷静な煩悩的戦略が
春山の脳内を
縦横無尽に駆け巡る。



そのとき、どこかで

鳥の啼く声がした。

ふと、横を見ると
草叢の端っこで

後輩の安室元禅師が
寂しそうに野菜ばかり
食べているので
心配になって声をかけた。

「ほら健康に悪いから
 肉の串を食べなさい。
 もう破門されたのだから
 肉も魚も、いくらでも
 食べたってイイじゃないか
 こだわるなよ」

その言葉を聞くと
哀れみを受けた感動からなのか
安室君は泣きそうな顔で言った。

「いや、別に渾沌氏と先輩に
 改造されて以来…
 食べ物も酸素も水も
 必要のない体に
 なってしまいましたので
 別に野菜も何も
 要らないのですが。
 全ての感覚が此れといって
 必要性が無くなってしまい
 少し寂しいのです、
 人間の時の方が精進料理でも
 今より美味しかったなと
 はは、今さらですがね」

それを聞いて、
春山は、かわいい後輩と
過去に過ごした
日々の出来事を少し思い出した。

ああ、そうだったのか。

過去の出来事が急に
思い出された瞬間、 
春山信玄は厳格な
面持ちで答えた。

「安室君が僕のプリンを
 食べたのが原因だったな。
 因果応報、諦めなさい。
 食べ物の恨みは千代祟る
 自分だけで済んで
 良かったね。
 思い出したら、
 何かアレになったから
 すぐに武田の家系図だして。
 そこの虎さんに説明するから」

その言葉を
受け流して、

渋く笑う安室君が

そっと右手を掲げると。


空気、最小粒子、あるいは紐が
安室君の周囲に集まり始めた。

渾沌氏によって内蔵された
宝貝を使用して
全ての存在の構造情報を元に
瞬時に分子を分解、再構築し

武田の家系図を
春山信玄の手の上に
発生させた。

「ごくろう。それにしても
 渾沌氏のデルちゃん、
 科学力が凄いナ
 一家に一台欲しいよね。
 究極便利な安室君って、
 帰ったら僕の家に住まない?
 美味しい御飯作ってあげるよ」

安室君は、
また哀しそうに笑い。

遥か彼岸を、眺めるような
遠い目線を虚空に投げかけてから

一言呟いた。

「ああ、御飯ですか…
 それも善いかも知れません」

春山は強く頷くと
信虎の元に走って行った。


肉を信虎が、
あらかた平らげている所に
系図を持った春山が来る。

「虎の爺さん、コレだよ。
 信是だよっ」

「おお、信是の!
 それは倅じゃな
 松尾信是…
 完全にワシの子孫じゃな」

春山は少し考えると
その名前を繰り返してみた

「まつおのぶこれ…?」
(アナタ違うわ、チョット左にある
 今井信是でしょう、コレよ信是っ)

春山の妄想の空想の産物、
ケイトちゃんが言った。

「そうか、知らなかった
 今井だったのか」

それを聞いた瞬間に
信虎の眼光が鋭くなった。

「今井…、忌々しい
 戦の光景が甦って来た
 武田氏流逸見氏の
 流れじゃな。
 うぬは、この信虎を欺くとは
 随分と良い度胸を…」

信虎が
会話の途中で

さっと
刀を抜き放つ

春山信玄の被っていた
迷彩帽子が

くるっと宙を舞ったあと

帽子のつばが
切れた…


「うぉ、凄い切れ味だ…。
 勝てないよ、コンナのに
 誰か助けてぇ」

信虎が、眼差しに
狂喜を映して

後ろに逃げる
春山信玄を威圧する。

「ぅう、やられる
 無理無理無理。
 小林君、そうだ安室君!
 助けてくれー」

緊張感の漂う中
春山信玄が泣き叫び
周囲を見まわすと

安室君が
遠くの木の陰から
コッソリ覗いている。

少し酷いコトを言った
腹いせに
観て見ぬフリを
する気なのだろうか。

しんだら如何する気だ。

彼は、そんな酷い子ではない
慈悲のある出来た後輩なのだ。
きっと助けてくれる。

春山が手招きすると
安室君の口が動いた。

声が小さいので
口の動きを見る…

い ん が
お う ほ う

春山の純粋な瞳から
反省色の涙が
大地に、そっと零れ落ちた。


「安室くん…
 ごめんなさい。
 ちくしょー、ひどい。
 この鬼めぇ、そんなだから
 破門されたんだー、やーい。
 悔しかったら助けろー
 誰かぁ、むぎゃーっ
 信虎に斬られる
 たすけてくれー!」


絶対絶命の状況。


そのとき、フランソワが
紙の皿を持って
信虎に近づいた。

「ソンナ馬鹿は
 信虎サマなら
 イツでも始末デキルじゃ
 無いデスか…
 それよりワタシと
 スパイシーな
 お料理デモ食べながら
 永遠に続く甘美な 
 お話しでも…」

美女の甘い声と、

香ばしく
食欲をそそる匂いが
風に乗り

信虎は思わず
刀を握る手を緩めた

信虎の後ろから
手をまわし

肉料理の皿を
目の前に差し出すと

フランソワは優しい声で
信虎の耳元に囁く


「ほら、いい香りの
 料理デース。
 美味しいものは 
 香りから味わうと
 とても素敵ですわ…」

すーぅ…

思わず信虎が
香りと空気を
鼻から吸い込み始めた

その瞬間、


彼女は

業務用コショウの
筒を開けて

思いきり
ゾンビパウダーを
信虎に喰らわせた

ザバッ

「がはっ、げ…
 ぐ、何を…」

偉大なゾンビマスター
フランソワ・マカンダルは

眼を輝かせて嗤うと
くるりと回転して言った。

「スパイシーな虎料理の
 完成デース!
 ゾンビになって
 永遠にワタシの下僕に
 なるがいいデース。
 エラそうに刃物振り回す
 武士なんか危なくて
 嫌いデース」


信虎は意識の昏迷する中

頭から地面に
崩れ落ちながら呻いた。

「貴様ぁ、は…かったな…」


春山信玄は
恐怖の現場を目撃した
通行人のような表情で


フランソワに御礼を言った。

「えーと、何だろ…。
 これが昔からよく言う、
 人間蛮事塞王ガウマーって
 状態なのかな。
 ともかく命が無事で良かった。
 可愛いフランソワーズちゃん
 ホントに助かりました。
 ありがとね」
(ガウマーって、カッコいいわね、ガウマー)


フランソワは
困ったような顔で
優しくほほえむと、
缶の蓋を閉めて言った。

「先ホドのお返しデース。
 気になるなら後で、
 働いて現金還元デ、
 この恩に酬いてくだサーイ」

春山信玄は即座に答えた

「気にならないので
 恩には酬いませーん」

彼女は缶の蓋を開けようと
一瞬だけ構えたが

少し考えたのか

優しい笑顔になると
粉がモッタイナイと言って

折りたたみ式の
椅子を置いて
静かに腰をおろした。

上泉信綱は
姉に捕まっているから
身動きは、とれないだろう。

暫く、これから如何するか
ゆったり考えながら

散歩でもしたいものだなと思い、

改めて周りの景色を観ると
群れる雨雲と暗い空の下に
やけに緑の葉っぱが
多いものだと感じた。

殆んど無駄な
雑木と雑草が
はもはもと
繁茂しているだけなのに

意外とこういう場所の
空気がウマイ。

春山は、丹田で空気を呑み
遠く灰色がかった紫の山を眺める。


これが戦国時代か…
結構、面白いものなのだなぁと

ひとり感慨に耽っていた。

つづく

テーマ: 自作連載小説 -  ジャンル: 小説・文学
by 護睡庵(春山信玄)  at 15:32 |  春山対信長 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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