蓬莱の山で

遥か昔、夢が

まだ現実だった頃

紂王が焼死して首を刎ねられた。

骨は土に還り
心は空に昇る

心は遠く蓬莱へ

鳳凰の住む山

遥かなる富士へ辿り着く

「私は如何して此処に来たのか…」

紂王だったモノが
雲海を眺め寂しそうに呟くと

いつの間にか
一人の老人が
後ろに座っていた

「ひどい話だよねぇ」

羽翼仙はポツリと言った。

「アナタは誰ですか…」


「この山の主じゃよ、
 生贄を神に捧げるコトとか、
 止めたのは正解じゃったな。
 鳳凰になったよ君」


「それより、天乙の代から続いた国が…」


その嘆きを聞いた老人は唄うように囀る

「まあ、仙人になった以上。
 国とかのコトは、もう考えるなよ。
 人間には、誤解されているけどな。
 悪い皇帝だったってね
 そういうもんさ、まつりごとなんてのは」


「そうですか…」


「誤解されたからって落ち込むな。
 もう死んでしまったのだから
 歴史なんてのは、どうにもならんよ。
 そんなこと鳳凰なんだから
 もう、放っておけ。
 ほら、ほうが、かかっておるのじゃ
 駄洒落を言ったのだから笑え、
 それが駄目なら腹ごしらえじゃ。
 四海の水を火焔で干し上げて
 旨そうな龍でも捕まえて
 一緒に喰うか、旨いぞ龍は」


「お腹減ったなぁ
 そんなに旨いですか
 龍は…」


「燃灯道人には気をつけろよ。
 弟子にさせられちまうからなぁ」

そういって笑うと


老人は遠い眼をして
雲海を見渡す。


見晴るかす霧の中、

大鵬金翅明王は
大空を飲み込む翼を拡げた。



テーマ: 短編小説 -  ジャンル: 小説・文学
by 護睡庵(春山信玄)  at 20:55 |  短編小説 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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