2007/11/12
「宇宙バイキング博士」
レポート1
時は旧地球暦三千六百年、
人類は宇宙に適応し
繁栄の極みを迎え…
無意味な戦争は消え去り、
千年の平和が人類に享受された。
しかし、平和の下で
苦悶する生物たちがいた。
永遠に崩れることの無い
コンクリートの下で、
ミミズから進化した
第二の知的生命体。
学名
「サンドワーム
サピエンス
サントリウム」
通称「艶かしき人々」
ミミズより進化した、
彼らの肌は滑らかで
姿かたちは人類と変わらない。
いや、むしろ高貴で美しい…
彼らは願いを込めて
人類に嘆願した。
「我々にも共に生きる
権利を与えてください」
太陽系元首、
ディ・アブロ・サロメは
地中の人々の
必死な願いをこう言って退けた。
「おろかな、ミミズ達…
下賎な蟲どもは
永久の闇の中で、
永遠に土を肥やすがよい」
慈悲も情けも無い言葉に
温厚なサントリウム達も
怒り狂った。
地下で千年蓄えた智慧を使い、
地球を内部から
巨大な要塞に作り変え
人類に全面戦争を仕掛けた。
泥沼の戦争は五十年続き、
今もまだ、砲撃が止む事は無い。
地球の暦で三千六百五十年…
人類世界に失望した
宇宙科学者、
「G・モルモット・B」は
太陽系人類連合の
中央ブレイン・システムである
「ハイランドの乙女」を複製し、
通信機能を追加して
オリジナルシステムを
自分の頭脳に埋め込んだ。
中央システムが送る
先端技術を手に入れ、
ついに…
傲慢な人類の鼻をへし折る、
地獄の戦艦
「ドゥルガー」を完成させた!
レポート2
プロフェッサー、
モルモットの戦艦は
従来の造船法を
全く無視した
画期的な
構築理論の元に創られた
C.W.S
(コスモロジカル・
ウォー・シップ)である!
300年前に超絶科学者
デミットが開発した
『万物構成理論式を利用した
物質および精神の造成法』
カプセルに詰められ、
宇宙に追放された
彼の研究成果は
極秘裏に太陽系
中枢システムに
保管されていた。
完全に忘れ去られていた
究極理論方程式と
造成機構の設計図が
頭脳に埋め込まれた
永久起動型太陽系
自立情報制御プログラム
通称「ハイランドの乙女」を
通した、情報検索の
網にかかり
怒りの物理学者モルモットは
それを、ひとつの
手段として有効に利用した。
この戦艦、全長は
スーパーメガバースと同等で
質量も同等。
しかし、縮小時の全長は
1プランク長である。
機械構造として
造られている場所は、
中央司令管制室
兼居住空間、80平方メートル
その周囲の物理法則は
宇宙定数の
部分的制御によって
造られる、完全なる
防御壁に護られている。
(通称 ケイオス オブ
アビス シールド)
防御壁外部の構造は、
状況により
物質構築を行う事で
適当に変化させる
コトが可能。
司令室よりも空間が
縮小する場合は
防御壁ごと
13から1000以上の
並列次元を
巻き込むことにより、
通常空間を
低次元に圧縮する。
そのときには
戦艦の全長が
現行物理法則宇宙において、
1プランク長になる。
全ての制御と操作は
「ハイランドの乙女」が行なう。
「さあ、構築されし
美の女神よ…
超絶主砲『インフレーション・
ブラスター』で
驕り高ぶった、
太陽系人類に
眼にものを
見せてやるのだ
さあ、覚悟は良いかぁ、
冥土の土産を
喰らうがイイ…
おのれ、己らがぁ
ぬををぉぉぉぉぉぉぉぉっ
ダァァァァァァァァアァイ
撃てぇぇぇぇぇぇぇっ!」
(プロフェッサー、
ソレは私が
許可しないノデ
実行不能です)
「そんなバカなぁっ、
ナゼだ?」
(プロフェッサー
インフレーション・
ブラスターは
危険です)
(A粒子の軌道上に
定数操作を行い
レールを敷きマス)
(レールを伝わり粒子が
最高速度で目標を
破壊しマス)
(現在の設定最高速度は
光速の365乗の
365乗デス)
(この宇宙は粒子発射の
衝撃によって
崩壊シマス)
(適切な数値の設定は
以後、ワタシに任せて
イタダキマス)
「どうして?」
(この宇宙が消えると
いうコトは
貴方とワタシも
消えるというコト)
(それはイヤです…)
「なるほど、それもそうだ
もっともな意見だ、解った。
全面的に許可する!」
そうして、地獄の戦艦は
意図的に低速を保ち
最終到達地点を目指す
最短航路をとる
太陽系中枢都市型惑星
「ブラッドオブアース」
はたして、人類のみが
平和に暮らす世界は
怒れるマッド・
サイエンティストの
頭脳によって
一瞬のうちに
焼き尽くされるので
あろうか?
その頃、サロメ直属
巨大艦隊の
量子レーダーに
不審な反応数値が
測定された。
無敵艦隊は
緊急戦闘配備について
待ち伏せの
体制を整える。
しかし、それは
プロフェッサーによって
完全に張り巡らされた
罠だった…
レポート3
おとりに
宇宙船のダミーを残し
空間転送装置を使い
人工惑星に立ち寄った
プロフェッサーは
酒場で酒を飲んでいた。
隅の方で、
あらそう声が
聞こえてきたが
関係ないので
無視していると
可愛い女性の声がする。
「やめて下さい、
私が何かしましたか?」
「お前、ミミズ人間の
分際で なぜ
此処にいる?」
「私だって、わたしだって
好きでこんな場所に
いるわけじゃ無いわ!」
男がグラスを掴み、
女性に投げつけようとした
瞬間に、
プロフェッサーの肩に
装備された
素粒子ガトリングキャノンが
何億もの閃光を放った。
音も無く
一瞬のうちに
無礼な男が
跡形も無く消え去ると
女性は言った。
「ありがとうございます!
しかし、あの…
スミマセン
何でも、無いです」
プロフェッサーは
笑っているのか、
怒っているのか
全く分からない
表情で思った。
このヒトは、なんて
美しい姿をしているのだ。
(プロフェッサー、
モシカシテ惚れまシタカ?)
無言でウナズクと
女性に尋ねた。
「捕虜として
連れてこられて
売られたという
トコロか…
名前は、
何というのかね?」
「フォルクロール・
エル・フローレ」
「最初の部分は
人類が憑けた名前か、
本名は、
エル・フローレか」
「はい…」
「こんな所にいても、
地獄を
味わうだけだろう。
私と一緒に
来ないかね?」
「え?」
「此処で悲しく
最後を迎えるか
私の船に乗って
茶でも飲みながら
テレビを一緒に見て
暮らすか
どちらかを選べと
言っているのだよ…」
フローレは一瞬、
考えてから
プロフェッサーの
眼を見て言った。
「もう、悲しいのは
嫌です…。
喜んで、ついて行くわ」
「決まりだな、
ぬははは!
ハイランドの乙女よ
居住空間への
転送よろしく」
(了解シマシタ、
プロフェッサー)
そして、宇宙船に戻った
プロフェッサーが
脳裏に浮かぶ、
頭脳レーダーを眺めると
サロメ軍の
待ち伏せの態勢が
十分に整っている事が
分かった。
フローレが
イスに腰をかけて
プロフェッサーを
不思議そうに、
眺めていると
彼は不敵な笑みを
浮かべながら
ひとり、言葉を
吐き出した。
「良く統率されては
いるが…
戦術が、なって無い。
宇宙で私を相手に
待ち伏せなんぞ、
できるはずが
無いであろうが!」
レポート 4
プロフェッサーは
頭脳レーダーの複製品を
宇宙船のテレビに
映し出して言った。
「フローレよ、
これが宇宙全域の
レーダーだが
何か解るかね?」
「父が軍人なので
少しは解ります、
それよりオジサン…
アナタのことは
なんと呼べばいいの?」
「オジサンではない
プロフェッサーと呼べ!」
「あははっ、解りました
プロフェッサー!」
プロフェッサーはニヤリと
爽やかに笑うと
テレビの紅い点を指して言う
「此処が敵の根城だ。
サロメのバカは此処におる」
「ここに、いるのね…」
「それで現在の敵が
この無駄に固まった黄色だ。
此処に沢山待ち伏せ
しているのが解るだろう?」
フローレは敵の数を数えて
眼を円くして叫んだ。
「無理よ、殺されるわ
こんなにいるなんて。
大きな戦艦が、沢山…」
「まあ、普通は
大型艦が千もいたら
勝ち目は無いのだが。
この船は普通じゃないから
他の戦艦は雑魚以下だ
まあ、そのモニターに
映すから、
暇つぶしに
菓子箱の煎餅でも
ボリボリ食べながら
戦い方をみていればいい」
「そのお煎餅っていうモノは
これですか、美味しそう。
解りましたプロフェッサー」
「それは、いいヤツだから
マズイという事は無い」
そう言うと
プロフェッサーは
ビールの空き瓶を
1ケース丸ごと担いで
戦艦ドゥルガーの
甲板に空間移動した。
プロフェッサーは
宇宙服も着ずに
甲板に出ると、
肩に担いでいた
ケースから
ビール瓶を四本
取り出した。
「ハイランド、
状況を報告してくれ」
(プロフェッサー、
敵艦隊マデノ距離ハ
600キロメートル、
敵艦ノ動力ハ
中央に在ル母艦ガ
供給シテイマス)
プロフェッサーの
脳内に埋め込まれた
究極演算装置が、
そう伝えると
彼は自分の体に
内蔵された
動力増幅装置を
3パーセントだけ
稼動させた。
これにより腕力が
少しだけ
補強されるのである。
戦艦ドゥルガーの
完成と共に
彼は体の全てを
兵器として
創り直している。
つまり彼自身が
究極戦艦と同じ程度の
破壊力を持った
究極兵器なのだ。
プロフェッサーは、
ビール瓶を掴み
敵艦隊の中心に向って
投げつけた。
投げた瞬間に
ビール瓶が
凄まじい重力波と共に
砕け散る
その6秒後
時空が歪むほどの衝撃が
敵艦隊の中心部を襲った
小さな爆発の後
蒼い光が内側に
引き込まれている光景が
遠くに見えた
母艦の動力源
ブラックホールエンジンが
重力崩壊を起こしたのだ。
「ハイランド、危険だ。
アレを何処かに飛ばせ」
(了解、他ノ遠イ銀河系ニ
転送シマス)
ブラックホールの
出来損ないが
他の場所に転送されると
システムインターフェイスの
ハイランドは言った。
(プロフェッサー、
最初カラ転送スレバ
ヨカッタノデハ?)
「いや、これでいい。
ストレス解消に
なったからな、
人間には無駄を楽しむ
心というモノがあるのだよ
分るかね?」
(機械ノワタシニハ
ワカリマセン…)
プロフェッサーが
最強戦艦の居間に戻ると
お煎餅を齧りながら
船外の様子をTVで観ていた
フローレは目をまるくして
大きな声で叫んだ。
「ちょっと!
オジサンどういう
腕力してるのっ
何か手で投げただけで
解らないけど、敵艦隊が
凄いことになったわ…」
プロフェッサーは
眉間にシワを寄せて言った。
「腕力ではない、科学力だ。
それにオジサンではない。
プロフェッサーと呼べ」
その後しばらく
何も思いつかなかったので
フローレと二人で、
お茶を飲んでいると
脳内演算装置ハイランドが
プロフェッサーに語りかけた
(プロフェッサー、
ワタシヒマデス)
(タイクツナノデ行動ノ
指針ヲ、オネガイシマス)
「あ、スマン。
それで何が目的だったのだ?」
(太陽系元首ノトコロニ
ムカウノデハ…)
プロフェッサーは少し考えると
ハイランドに指示を出した。
「そんなに急ぐコトも無いが…
急ぎたいなら早いほうがイイ。
ふふふ、元首の元に私を
今すぐ転送しろっ」
その瞬間、
フローレがすかさず
振り向いて言った
「そんなコトできるんですかっ!」
その声を聞いた
プロフェッサーは
ニヤリと笑い
大きく口を動かして答えた
「この宇宙に
不可能なコトなど…
無いっ!」
ぬはははという
低い笑い声を残して
ハイランドによって
プロフェッサーの体は
物質の最小単位まで
分解され、周りの時空が
幾重にも折り曲げられて
グォンという音が
一瞬だけした後に
跡形も無く遠くの方に
転送されていった。
ひとり艦内に取り残された
フローレは、
新しい煎餅を出して
お茶を飲みながら
一人で呟いていた。
「おーい、オジサーン…
ホントに消えちゃったわ。
私に、できることは
TVを何となく
寝転がりながら観るとか。
この、オジサンが
食べろと言った
お煎餅を、できるだけ
沢山食べてみるとかっ
あ、ゲーム機を発見!
オジサンっ…
私、何とか頑張って
この船の留守を守ります
だからオジサンも頑張って」
その後暫く、煎餅の音と
ゲームの音楽が鳴り響き。
一人しかいない
居間にしては
意外と賑やかな光景が
艦内映像記録のデータが
記憶装置を通して
プロフェッサーの
脳内に転送されていた。
その光景を観て
宇宙の彼方に
転送されながら
プロフェッサーは
こう想った
フローレ、
オジサンっ
オジサンって
人の話を聞いて
いなかったのか。
時は旧地球暦三千六百年、
人類は宇宙に適応し
繁栄の極みを迎え…
無意味な戦争は消え去り、
千年の平和が人類に享受された。
しかし、平和の下で
苦悶する生物たちがいた。
永遠に崩れることの無い
コンクリートの下で、
ミミズから進化した
第二の知的生命体。
学名
「サンドワーム
サピエンス
サントリウム」
通称「艶かしき人々」
ミミズより進化した、
彼らの肌は滑らかで
姿かたちは人類と変わらない。
いや、むしろ高貴で美しい…
彼らは願いを込めて
人類に嘆願した。
「我々にも共に生きる
権利を与えてください」
太陽系元首、
ディ・アブロ・サロメは
地中の人々の
必死な願いをこう言って退けた。
「おろかな、ミミズ達…
下賎な蟲どもは
永久の闇の中で、
永遠に土を肥やすがよい」
慈悲も情けも無い言葉に
温厚なサントリウム達も
怒り狂った。
地下で千年蓄えた智慧を使い、
地球を内部から
巨大な要塞に作り変え
人類に全面戦争を仕掛けた。
泥沼の戦争は五十年続き、
今もまだ、砲撃が止む事は無い。
地球の暦で三千六百五十年…
人類世界に失望した
宇宙科学者、
「G・モルモット・B」は
太陽系人類連合の
中央ブレイン・システムである
「ハイランドの乙女」を複製し、
通信機能を追加して
オリジナルシステムを
自分の頭脳に埋め込んだ。
中央システムが送る
先端技術を手に入れ、
ついに…
傲慢な人類の鼻をへし折る、
地獄の戦艦
「ドゥルガー」を完成させた!
レポート2
プロフェッサー、
モルモットの戦艦は
従来の造船法を
全く無視した
画期的な
構築理論の元に創られた
C.W.S
(コスモロジカル・
ウォー・シップ)である!
300年前に超絶科学者
デミットが開発した
『万物構成理論式を利用した
物質および精神の造成法』
カプセルに詰められ、
宇宙に追放された
彼の研究成果は
極秘裏に太陽系
中枢システムに
保管されていた。
完全に忘れ去られていた
究極理論方程式と
造成機構の設計図が
頭脳に埋め込まれた
永久起動型太陽系
自立情報制御プログラム
通称「ハイランドの乙女」を
通した、情報検索の
網にかかり
怒りの物理学者モルモットは
それを、ひとつの
手段として有効に利用した。
この戦艦、全長は
スーパーメガバースと同等で
質量も同等。
しかし、縮小時の全長は
1プランク長である。
機械構造として
造られている場所は、
中央司令管制室
兼居住空間、80平方メートル
その周囲の物理法則は
宇宙定数の
部分的制御によって
造られる、完全なる
防御壁に護られている。
(通称 ケイオス オブ
アビス シールド)
防御壁外部の構造は、
状況により
物質構築を行う事で
適当に変化させる
コトが可能。
司令室よりも空間が
縮小する場合は
防御壁ごと
13から1000以上の
並列次元を
巻き込むことにより、
通常空間を
低次元に圧縮する。
そのときには
戦艦の全長が
現行物理法則宇宙において、
1プランク長になる。
全ての制御と操作は
「ハイランドの乙女」が行なう。
「さあ、構築されし
美の女神よ…
超絶主砲『インフレーション・
ブラスター』で
驕り高ぶった、
太陽系人類に
眼にものを
見せてやるのだ
さあ、覚悟は良いかぁ、
冥土の土産を
喰らうがイイ…
おのれ、己らがぁ
ぬををぉぉぉぉぉぉぉぉっ
ダァァァァァァァァアァイ
撃てぇぇぇぇぇぇぇっ!」
(プロフェッサー、
ソレは私が
許可しないノデ
実行不能です)
「そんなバカなぁっ、
ナゼだ?」
(プロフェッサー
インフレーション・
ブラスターは
危険です)
(A粒子の軌道上に
定数操作を行い
レールを敷きマス)
(レールを伝わり粒子が
最高速度で目標を
破壊しマス)
(現在の設定最高速度は
光速の365乗の
365乗デス)
(この宇宙は粒子発射の
衝撃によって
崩壊シマス)
(適切な数値の設定は
以後、ワタシに任せて
イタダキマス)
「どうして?」
(この宇宙が消えると
いうコトは
貴方とワタシも
消えるというコト)
(それはイヤです…)
「なるほど、それもそうだ
もっともな意見だ、解った。
全面的に許可する!」
そうして、地獄の戦艦は
意図的に低速を保ち
最終到達地点を目指す
最短航路をとる
太陽系中枢都市型惑星
「ブラッドオブアース」
はたして、人類のみが
平和に暮らす世界は
怒れるマッド・
サイエンティストの
頭脳によって
一瞬のうちに
焼き尽くされるので
あろうか?
その頃、サロメ直属
巨大艦隊の
量子レーダーに
不審な反応数値が
測定された。
無敵艦隊は
緊急戦闘配備について
待ち伏せの
体制を整える。
しかし、それは
プロフェッサーによって
完全に張り巡らされた
罠だった…
レポート3
おとりに
宇宙船のダミーを残し
空間転送装置を使い
人工惑星に立ち寄った
プロフェッサーは
酒場で酒を飲んでいた。
隅の方で、
あらそう声が
聞こえてきたが
関係ないので
無視していると
可愛い女性の声がする。
「やめて下さい、
私が何かしましたか?」
「お前、ミミズ人間の
分際で なぜ
此処にいる?」
「私だって、わたしだって
好きでこんな場所に
いるわけじゃ無いわ!」
男がグラスを掴み、
女性に投げつけようとした
瞬間に、
プロフェッサーの肩に
装備された
素粒子ガトリングキャノンが
何億もの閃光を放った。
音も無く
一瞬のうちに
無礼な男が
跡形も無く消え去ると
女性は言った。
「ありがとうございます!
しかし、あの…
スミマセン
何でも、無いです」
プロフェッサーは
笑っているのか、
怒っているのか
全く分からない
表情で思った。
このヒトは、なんて
美しい姿をしているのだ。
(プロフェッサー、
モシカシテ惚れまシタカ?)
無言でウナズクと
女性に尋ねた。
「捕虜として
連れてこられて
売られたという
トコロか…
名前は、
何というのかね?」
「フォルクロール・
エル・フローレ」
「最初の部分は
人類が憑けた名前か、
本名は、
エル・フローレか」
「はい…」
「こんな所にいても、
地獄を
味わうだけだろう。
私と一緒に
来ないかね?」
「え?」
「此処で悲しく
最後を迎えるか
私の船に乗って
茶でも飲みながら
テレビを一緒に見て
暮らすか
どちらかを選べと
言っているのだよ…」
フローレは一瞬、
考えてから
プロフェッサーの
眼を見て言った。
「もう、悲しいのは
嫌です…。
喜んで、ついて行くわ」
「決まりだな、
ぬははは!
ハイランドの乙女よ
居住空間への
転送よろしく」
(了解シマシタ、
プロフェッサー)
そして、宇宙船に戻った
プロフェッサーが
脳裏に浮かぶ、
頭脳レーダーを眺めると
サロメ軍の
待ち伏せの態勢が
十分に整っている事が
分かった。
フローレが
イスに腰をかけて
プロフェッサーを
不思議そうに、
眺めていると
彼は不敵な笑みを
浮かべながら
ひとり、言葉を
吐き出した。
「良く統率されては
いるが…
戦術が、なって無い。
宇宙で私を相手に
待ち伏せなんぞ、
できるはずが
無いであろうが!」
レポート 4
プロフェッサーは
頭脳レーダーの複製品を
宇宙船のテレビに
映し出して言った。
「フローレよ、
これが宇宙全域の
レーダーだが
何か解るかね?」
「父が軍人なので
少しは解ります、
それよりオジサン…
アナタのことは
なんと呼べばいいの?」
「オジサンではない
プロフェッサーと呼べ!」
「あははっ、解りました
プロフェッサー!」
プロフェッサーはニヤリと
爽やかに笑うと
テレビの紅い点を指して言う
「此処が敵の根城だ。
サロメのバカは此処におる」
「ここに、いるのね…」
「それで現在の敵が
この無駄に固まった黄色だ。
此処に沢山待ち伏せ
しているのが解るだろう?」
フローレは敵の数を数えて
眼を円くして叫んだ。
「無理よ、殺されるわ
こんなにいるなんて。
大きな戦艦が、沢山…」
「まあ、普通は
大型艦が千もいたら
勝ち目は無いのだが。
この船は普通じゃないから
他の戦艦は雑魚以下だ
まあ、そのモニターに
映すから、
暇つぶしに
菓子箱の煎餅でも
ボリボリ食べながら
戦い方をみていればいい」
「そのお煎餅っていうモノは
これですか、美味しそう。
解りましたプロフェッサー」
「それは、いいヤツだから
マズイという事は無い」
そう言うと
プロフェッサーは
ビールの空き瓶を
1ケース丸ごと担いで
戦艦ドゥルガーの
甲板に空間移動した。
プロフェッサーは
宇宙服も着ずに
甲板に出ると、
肩に担いでいた
ケースから
ビール瓶を四本
取り出した。
「ハイランド、
状況を報告してくれ」
(プロフェッサー、
敵艦隊マデノ距離ハ
600キロメートル、
敵艦ノ動力ハ
中央に在ル母艦ガ
供給シテイマス)
プロフェッサーの
脳内に埋め込まれた
究極演算装置が、
そう伝えると
彼は自分の体に
内蔵された
動力増幅装置を
3パーセントだけ
稼動させた。
これにより腕力が
少しだけ
補強されるのである。
戦艦ドゥルガーの
完成と共に
彼は体の全てを
兵器として
創り直している。
つまり彼自身が
究極戦艦と同じ程度の
破壊力を持った
究極兵器なのだ。
プロフェッサーは、
ビール瓶を掴み
敵艦隊の中心に向って
投げつけた。
投げた瞬間に
ビール瓶が
凄まじい重力波と共に
砕け散る
その6秒後
時空が歪むほどの衝撃が
敵艦隊の中心部を襲った
小さな爆発の後
蒼い光が内側に
引き込まれている光景が
遠くに見えた
母艦の動力源
ブラックホールエンジンが
重力崩壊を起こしたのだ。
「ハイランド、危険だ。
アレを何処かに飛ばせ」
(了解、他ノ遠イ銀河系ニ
転送シマス)
ブラックホールの
出来損ないが
他の場所に転送されると
システムインターフェイスの
ハイランドは言った。
(プロフェッサー、
最初カラ転送スレバ
ヨカッタノデハ?)
「いや、これでいい。
ストレス解消に
なったからな、
人間には無駄を楽しむ
心というモノがあるのだよ
分るかね?」
(機械ノワタシニハ
ワカリマセン…)
プロフェッサーが
最強戦艦の居間に戻ると
お煎餅を齧りながら
船外の様子をTVで観ていた
フローレは目をまるくして
大きな声で叫んだ。
「ちょっと!
オジサンどういう
腕力してるのっ
何か手で投げただけで
解らないけど、敵艦隊が
凄いことになったわ…」
プロフェッサーは
眉間にシワを寄せて言った。
「腕力ではない、科学力だ。
それにオジサンではない。
プロフェッサーと呼べ」
その後しばらく
何も思いつかなかったので
フローレと二人で、
お茶を飲んでいると
脳内演算装置ハイランドが
プロフェッサーに語りかけた
(プロフェッサー、
ワタシヒマデス)
(タイクツナノデ行動ノ
指針ヲ、オネガイシマス)
「あ、スマン。
それで何が目的だったのだ?」
(太陽系元首ノトコロニ
ムカウノデハ…)
プロフェッサーは少し考えると
ハイランドに指示を出した。
「そんなに急ぐコトも無いが…
急ぎたいなら早いほうがイイ。
ふふふ、元首の元に私を
今すぐ転送しろっ」
その瞬間、
フローレがすかさず
振り向いて言った
「そんなコトできるんですかっ!」
その声を聞いた
プロフェッサーは
ニヤリと笑い
大きく口を動かして答えた
「この宇宙に
不可能なコトなど…
無いっ!」
ぬはははという
低い笑い声を残して
ハイランドによって
プロフェッサーの体は
物質の最小単位まで
分解され、周りの時空が
幾重にも折り曲げられて
グォンという音が
一瞬だけした後に
跡形も無く遠くの方に
転送されていった。
ひとり艦内に取り残された
フローレは、
新しい煎餅を出して
お茶を飲みながら
一人で呟いていた。
「おーい、オジサーン…
ホントに消えちゃったわ。
私に、できることは
TVを何となく
寝転がりながら観るとか。
この、オジサンが
食べろと言った
お煎餅を、できるだけ
沢山食べてみるとかっ
あ、ゲーム機を発見!
オジサンっ…
私、何とか頑張って
この船の留守を守ります
だからオジサンも頑張って」
その後暫く、煎餅の音と
ゲームの音楽が鳴り響き。
一人しかいない
居間にしては
意外と賑やかな光景が
艦内映像記録のデータが
記憶装置を通して
プロフェッサーの
脳内に転送されていた。
その光景を観て
宇宙の彼方に
転送されながら
プロフェッサーは
こう想った
フローレ、
オジサンっ
オジサンって
人の話を聞いて
いなかったのか。




