2007/09/10
「夜と太陽」

この世界の何処にでも
時間と空間の宮殿が存在する…
その宮殿にはそれぞれに、
ありとあらゆる存在が暮らしているらしい。
そのひとつ、太陽の宮殿に住まうのは我らのよく知る存在。
静かな部屋の片隅で太陽が鏡の前に座っていると、
美しい夜が黒衣を蒼くなびかせて訪れた。
そして、夜は太陽に向かって
優しく、ささやいた…
「あなたに訊きたい事が在ります。
暗闇から見る星達はとても美しい、私はそれを見るのが楽しみです。
光は闇から見た時が一番美しいと思うのですが…
光から見た闇は美しいのでしょうか。それとも、恐ろしいですか?」
太陽は紅い髪を梳かしながら、流れるように返事をかえす。
「私から見た闇というのは、そうね…
例えるならばそれは人間における大気、魚に対する海の様なもの。
私達は闇に包まれて光を放っているのです。
闇は私のゆりかご…
そして、夢でもあるのです。
眠りながら見るものと心に描く理想、両方の意味ですよ。
だから、恐ろしいほどに美しいのです」
夜は笑顔で太陽に別れを告げた。
夜が立ち去り、いなくなった後に太陽は独り考え込む…
櫛をテーブルに優しく放り投げると
疑問の言葉を地球に向かい、囁く様に投げかける。
「人はなぜ闇を恐れ、憎むのでしょうか
それに我々に対して悪意を持っている者もいる。
人間の起こす、くだらぬ悪しき事などと
闇が同一のものと浅ましくも考えているのでしょうか。
私が愛する闇を厭わしく思うのならば…
私が人間を照らす必要が何処にあると考えますか。
闇に敬意を払わない者は永遠に光を観ることは叶わず
逆もまた然りとは考えませんか。
考えるのが得意だったでしょう、人間は。
もう照らすの疲れちゃったから止めちゃおうかなー。
まあ、半分は冗談だけどね」
地球は笑いながら、太陽の話を聞いていた。
そうして太陽に語りかけた。
「何を言ったところで彼らが耳を傾ける事は無いさ、
ただね…
嫌なモノも良いモノも、いずれは崩れ往くよ。
だから、一緒にやってゆくうちに徐々に良くなるだろ。
まあ、その時に我々が、この姿で無い事は確かだけど…」
太陽は背中が痛くなるほど大笑いして
部屋のベッドに寝転がると、ひとことつぶやいた。
「ありがとう、機嫌が治ったから
今日は休みにする。雨を宜しくたのむわ」
地球は雨を降らせると太陽の宮殿を見つめて考えた。
(いつもこの調子だ、仕事が増えて困るじゃないか!)
fin




